書斎にて、筆を置いた作者に、《私》が言った。
「あんまりとんとん終わらせないでくださいよ」
作者はビクッとしてふり返り、
「困るよ、ここにまで来たら。それに終わり方はまだ変更を検討中なんだから」
「そうですか。それならよござんすがね。――ああそうだ、美しい妻と出会わせてくれてありがとうございました」
「なに、君が自力で物にしたんだから。他に比類なき口説き文句と、お城とで以てね。美しい南国の鳥みたいな求愛だったよ」
これに《私》は照れ笑いを浮かべたが、気を取り直すように一つ咳払いをして、
「ところで先生は、さっきまでのあの先生ですか」
「さあね、と言って私は肩をすくめるよ」
「まあ何にせよ、私のことを読んでいた者は今、先生と同じ世界にいるわけですね。つまりこの時空に」
「そうなるね」
「そこで相談なんですが、一つ私のために、何人か捕まえて来てはくれませんか」
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