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アレクサンドリア図書館 第三章(完)

生贄物語(第9話)

尼子猩庵

この作品は遂に完成された究極のAIが書いたのだと第一章の「私」は言い張る。
   
※第58回北日本文学賞(2023)二次選考落選
※第五回文芸思潮新人賞(2024)三次予選落選

タグ: #メタフィクション #実験的 #純文学

小説

2,675文字

書斎にて、筆を置いた作者に、《私》が言った。

「あんまりとんとん終わらせないでくださいよ」

作者はビクッとしてふり返り、

「困るよ、ここにまで来たら。それに終わり方はまだ変更を検討中なんだから」

「そうですか。それならよござんすがね。――ああそうだ、美しい妻と出会わせてくれてありがとうございました」

「なに、君が自力で物にしたんだから。他に比類なき口説き文句と、お城とで以てね。美しい南国の鳥みたいな求愛だったよ」

これに《私》は照れ笑いを浮かべたが、気を取り直すように一つ咳払いをして、

「ところで先生は、さっきまでのあの先生ですか」

「さあね、と言って私は肩をすくめるよ」

「まあ何にせよ、私のことを読んでいた者は今、先生と同じ世界にいるわけですね。つまりこの時空に」

「そうなるね」

「そこで相談なんですが、一つ私のために、何人か捕まえて来てはくれませんか」

© 2025 尼子猩庵 ( 2025年5月9日公開

作品集『生贄物語』最終話 (全9話)

生贄物語

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