山口市と中原中也賞運営委員会が主催する「第29回中原中也賞」を佐藤文香『渡す手』(思潮社)が受賞した。

 山口市出身の詩人中原中也の業績を永く顕彰することを目的として1996年に創設された。

 佐藤文香は1985年生まれの兵庫県神戸市出身の俳人。早稲田大学第一文学部卒。2008年、第一句集『海藻標本』(ふらんす堂)を発表。2018年には恋愛掌編集『そんなことよりキスだった』(左右社)も刊行されている。

 最終選考作品には、伊口さや『大人になったらこわくないよ』(思潮社)、大島 静流『蔦の城』(思潮社)、貝塚津音魚『里山-イノシシのうた』(文化企画アオサギ)、姜湖宙『湖へ』(書肆ブン)、佐藤文香『渡す手』(思潮社)、佐峰存『雲の名前』(思潮社)、高橋実里『とおくの火』(日本大学芸術学部文芸学科)の7作があがっていた。

 2022年12月1日から2023年11月30日までに刊行された現代詩の詩集240点から選ばれた。2024年2月17日に、山口市の湯田温泉ユウベルホテル松政で最終選考作品として選ばれた7作品を対象に選考委員の詩人カニエ・ナハ、川上未映子、詩人の野崎有以、詩人・蜂飼耳、歌人の穂村弘の五人による選考会が開かれた。

 贈呈式は4月29日に山口市で行われる。受賞者には、正賞として中也と親交のあった彫刻家高田博厚制作の「中原中也ブロン像」と、副賞として100万円が贈呈される。

 なお、3月に発売予定の文芸誌『ユリイカ』4月号(青土社)に受賞作の一部と選考会の内容が掲載される。