2017年11月19日、香港の銅鑼湾地区にある人気書店「内部書店」がこの日までに閉店していたことがわかった。内部書店は、中国本土で禁書とされている書籍を数多く取り扱うことで知られていた。一部では中国当局からの圧力が原因ではないかとの声もあるが、書店関係者はこれを否定している。

歴史的経緯から一国二制度状態にある香港では、中国本土と違って言論・出版の自由が認められている。そのため本土では読めない共産党批判や暴露本の類を取り扱うことも可能で、複数の書店が競って禁書を販売してきた。2010年に開業した内部書店もそんな禁書書店のひとつで、香港の市民はもとより、海外からも研究者が足を運ぶ評判の書店だった。

しかし2015年、香港における出版の自由が脅かされる事件が起きる。同じく禁書書店のひとつであった「銅鑼湾書店」の関係者5人が謎の失踪を遂げ、やがて閉店に追い込まれたのだ。のちにこの関係者たちは中国当局からの取り調べを受けていたことが判明し、それから香港のメディアは自主規制を強めるようになっている。こうした背景から、内部書店の閉店についても当局からの圧力があったのではないかという疑念が広がっているわけだ。

しかし内部書店関係者は、閉店の理由をあくまでも「賃貸契約が満了を迎えただけ」だとしている。たしかに銅鑼湾は地価が高いエリアで、ニューヨーク5番街やシャンゼリゼ通りとともに毎年のように賃貸料世界一の座を争っているほどだ。それを踏まえると、この閉店理由も頷けないことはない。

いずれにせよ、内部書店が閉店したことは事実であり、今後別の土地で再開店する予定も一切ないとのことだ。香港市民にとっては、本土の禁書に触れられる貴重な機会がまたひとつ失われてしまったことになる。