遊郭関連書籍専門の出版社であるカストリ出版が、直営店を東京・吉原に出店する。店名はそのものずばり「カストリ書房」で、オープンは2016年9月3日(土)だ。店舗となるのはかつて実際に遊郭として経営されていた建物であり、時代を超えて遊里史を探究しているカストリ出版に相応しい立地といえるだろう。

2014に設立されたカストリ出版は、国会図書館や有名大学の図書館にも所蔵されていない貴重な遊里史資料の発掘・復刻を行ってきた出版社だ。幻の作品とまで呼ばれた『全国女性街ガイド』(渡辺寛著、1955年)を60年ぶりに復刻するなど、その意欲的な活動は文化風俗史的にも高く評価されている。

これまで同社の書籍はネット通販や契約書店でのみ取り扱われており、今回オープンするカストリ書房は初の直営店となる。店舗では、他社から出版された書籍も含め、遊郭関連の資料を幅広く取り扱っていく予定だという。

近現代の日本文学と遊郭に浅からぬ関係があるのは周知のとおりで、遊郭・遊女を描いた作品の背景を読み解くためには遊里史の知識も欠かせないはずだ。筆者が幼少期に通っていた保育園も、吉行淳之介『原色の街』の舞台となった旧赤線地帯に位置しており、遊里史を深く理解することは個人史的にも重要事となっている。

今後は識者を招いてのトークイベントも企画されているようなので、遊里史に関心のある方は一度足を運んでみてはいかがだろうか。