東京オリンピック二〇二〇のロゴ剽窃事件を覚えているだろうか。そう、あの華々しい経歴を持つデザイナーの佐野研二郎氏がデザインしたロゴが、ベルギーにある劇場のロゴをパクっていたのではないか、というスキャンダルである。結果としてロゴは採用を撤回され、野老朝雄の手になる市松模様のロゴが採用された。
さて、破滅派は二〇一九年十一月、来る東京オリンピックの開幕に向けて特集を「東京オリンピック新種目」に決定した。これから起きるイベントをちょっと先取りしたら話題になるのではないか、という打算を働かせたわけだ。フリースタイル自殺(藤城孝輔)、大相撲(大猫)、4×200メートルモッコリレー(佐川恭一)、ドーピング(牧野楠葉)など、個性的な新競技を題材にした創作集として優れたパロディの企画になった。私はウンコ水の威力を確かめるためにお台場の海に入り、警備員に怒られるという得難い経験をした。もちろん、その頃は新型コロナウィルスの蔓延など予測できるはずもなく、東京オリンピックがまさか翌々年に延期されるなどとは夢にも思っていなかった。
で、だ。この雑誌の表紙には、その頃すでに不採用が決まっていた佐野氏によるロゴを採用することにした。なんといってもパクった疑惑のあるロゴである。このロゴをさらにパクったからといって、訴えられるリスクは低いだろう。訴えられたら訴えられたでちょっと面白いし、ネタとして消費すればよい、そう考えていた。
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