国立国会図書館が5月19日から、絶版本など入手困難になった書籍や資料のインターネット経由で提供するサービスを開始する。

個人で同館の利用者登録をしていれば自身のパソコンやタブレット端末で閲覧が可能になる。登録は都内千代田区にある同館と京都府精華町の関西館のほか、郵送での手続きもできる。氏名、住所、電話番号などを記した申請書提出と運転免許証など本人確認書類の掲示が必要とのこと。

日本国内で発行されたすべての出版物は、国立国会図書館法(第24条)に基づく納本制度によって、国立国会図書館への納入が義務付けられている。同館の総蔵書数は4560万9602点(令和2年度時点)にも及ぶ。

なお、サービス開始時にはネットでの手続きも可能になる予定。閲覧できるのは、電子データ化が済んだ約153万点(1月時点)。

絶版本など希少価値の高い資料は、古書店やネット取引で高値で売買されることも多く、デジタル化も進んでいないのが実情。特に翻訳本は市場規模や著作権上の問題もあり、すぐに絶版になることが多い。

個人的にはオーストリアの作家トーマス・ベルンハルトの『石灰工場』(竹内節訳、ハヤカワ・リテラチャー、1981年)が現在3万5000円近い高値で取引されていることにやきもきしている。ベルンハルトはみすず書房の『破滅者』や『消去』など新装版復刊で再評価が高まっており、続々と新訳も刊行されているので『石灰工場』復刊、新訳も期待しているが、まずネット閲覧できるようになると喜ばしい。