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混詩「自尊心の歴史」 2018.11.6

混詩集 (第9話)

Juan.B

※親愛なる「ふつーの日本人」達へ捧ぐ

1,365文字

自尊心などというものは

みんなが誇らしげになるような

そんなアクティブでポジティブで

エレガントでアッパーなものではなく

まったくどんよりとして光り輝かず

犬のクソと同じ形をしているかもしれない

だが誰もその可能性に目を向けない

 

いつまでも自分の心と体と諸々が

神社の初詣や七夕の短冊で維持できると思い込んでいる

おお素晴らしい人たちのために

ある人々は卑屈さをよおく示してくれた

そして対価は未だない

 

おお標本の家系に生まれたがために

医者ときたら俺のケツを叩いて無理やり息をさせた

心臓など止まってしまえば良かった

こんなぎらつく悪質な太陽を誇る国など

熱中症の後遺症に人を踏みつけるなどあるものか

 

 

母親の腹から取り出され息が止まっているあいだ俺は考えた

もし皆手足や目鼻口性器がバラバラにつき

肌や髪や爪や歯や性器の色だって綺麗な虹からではなく百万人のゲロから適当に選んだ様に豊富で

いやせめてバベルの塔の時にカミサマが優しかったなら

それだけで諸問題の九割は解決以前に生じなかっただろうと

 

最古の殺人の遺体は俺と同じだっただろうか

単に快楽を追求したら殺されたソドムとゴモラの人々は俺と同じだっただろうか

哲学を理解しないバルバロイは俺と同じだっただろうか

棍棒を持った審問官を前にしたユダヤ人は俺と同じだっただろうか

子どもから石を投げられるズィンミーは俺と同じだっただろうか

訳も分からない連中にはぎ取られるインディオは俺と同じだっただろうか

さて身内から南蛮人に売られた日本人は俺と同じだっただろうか

美しい海岸で銃と取り換えっこされる黒人は俺と同じだっただろうか

逃げ場も無いタスマニア人は俺と同じだっただろうか

大地震を生き残ったと思ったら殺された朝鮮人は俺と同じだっただろうか

そうだレーベンスボルンで生まれさせられた混血児は俺と同じだっただろうか

そしてそれらの真逆の位置で刃物や銃を抱えた連中の自尊心はもうぎらつく太陽の様に光り輝いていた

 

俺は生まれた時からすばらしい石炭や石油だった

他人に燃料を供給してくれる

教室から役所の待合室まで

俺が座ってるだけでみんな元気になった

バスでうめいている障害者は見ていて気分が良くないが

俺はまだヒトらしいから見やすいのだと

そしてある日俺はある哀れな日本人を制圧し自尊心てやつの何たるかを実感した

 

 

時代のために差別されて殺された

おお嫌ですねえ

ああ嫌だ

怖いなあ

怖い怖い

でも今はダイジョウブ

安心してネ

君は生きてるからね

生きてるんだよ!

ナマ!

生きてるだけでも感謝しろ

分かったかこの自意識過剰のブタ

まったくお前は生きてるだけでも

文句ばかり垂れて貢献もせず

カタワどもと変わらねえよ

カタワ!

 

 

自尊心などというものは

抱きしめてくれる天使みたいに描くな

犬のクソのように描け

そして犬のクソの様な自尊心は

国や宗旨や年や地位によらず

俺やお前らそれぞれの名前だけで名付けられなければならぬ

そして互いにせめてその存在の日陰だけでも尊べた時

やっと僅かに光るのかも知れない

 

そしてこれに最初に気付くことすら嘲笑されるのを耐えている

誇っていた奴が一番最後になり威張らなかった奴が最初になるその日を待ち

ぎらつく太陽の下で泥交じりの数滴の水を眺めながら

© 2018 Juan.B ( 2018年11月6日公開

作品集『混詩集 』第9話 (全12話)

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