『ビャッコウ』
僕の封筒に糊付けした郵便局員は 三面記事で見た顔
瞬きを1分で16回もするから 呼吸は肩でする
笑っちまう 僕のヘソ
切手には知らない鳥が印刷されていて
図鑑を買う前にビャッコウって名付けてやった
白い光? ノーンノン
巣から落ちた雛鳥のフッサフサの体毛
それらを数える仕事あるだろ?
数えるには細心の注意を払って
雛鳥にストレスをかけまいとするんだけれども
結局 人間の指なんて雛鳥の綿毛に寄り添えないから
雛鳥は「痛ったあい!」ってピイピイ言うんだ
その時 耳に36mg以上の耳垢が溜まっていると
ピイピイ が ビャッコウ
って聞こえるようになる
僕には切手に印刷されたよくわからない鳥が
そのビャッコウって鳴いたように思えて
歯医者での麻酔が効いている内に
郵便局で手紙を出そうとしたわけさ
ビャッコウ ビャッコウ ビャッコウ
ビャッコウ ビャッコウ ビャッコウ
もう駄目だ 眠れない
感情移入が加速して 暴徒と化した映像集
ノイズ混じりのサウンド重視
もはや僕の心は 雛鳥の怯え
僕の頭は 鳥頭
僕のアンヨは ヨレヨレの軟骨
飛び込んでしまえ 配達員の鞄の中は
診察台よりは居心地がいいって
タイムラインで声高に誰か言ってるよ
宛先は門の無いところで
僕に貼られた切手が許す限り ずっと遠くまで
とんずら結構 行っちまえ
背後から どんな声が聞こえても
もう手紙は配達員の鞄の中だから
図鑑の鳥の名付け親を語ってやろう
ビャッコウ ビャッコウ ビャッコウ
ビャッコウ ビャッコウ ビャッコウ・・・・・
『ヒント売りに会った』
無事に正月を迎えた
初詣を近所の八幡神社で迎えた帰り 夜の道で
ヒント売りに会った
何のヒントって そりゃ 生きるためのヒントさ
本殿から真っ直ぐ真正面にある鳥居に寄りかかり
ヒント売りは 真冬にもかかわらず 割と薄着だ
白い犬を連れている
確かに迷っていた
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