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殺風景

昏睡状態(第12話)

大川縁

詩です。ふと東武東上線寄居駅で蕎麦を食べたことを思い出し、そこからイメージして書きました。もっとグッチャグッチャにしてやりたかったのですが、なんだか色々と見失いそうでしたのでコンパクトにまとめました。混乱は常にしているので、論理とかは先に墓に入っています。

タグ: #ホラー #崖っぷち #死 #痛い #自虐 #貧困 #閉塞感

4,627文字

東武東上線下り 和光-朝霞

 

 

タタン タタン

タタン タタン・・・

 

乗り物酔いすると 音や眼圧に敏感になるような気がする

いろんなものが体の中に 勝手に入ろうとするから

本当は暴れているよ

遠くの殺風景に並ぶ

ガードレールの脚の数を数えながら

 

車内の人間は俯くと陰になり

モニターから伝わる熱で 色を変える

 

まばらな気まぐれ 憂鬱な思考は後をつける

縄のかかる首 引いてくれ

 

嵌め殺しの居心地に

どうして足掻かずにいられるのだろう

 

奇妙だよ

そのご褒美 美味しい?

 

・・・・・・

 

東武東上線下り 志木-柳瀬川

 

 

タタン タタン

タタン タタン・・・

 

タタン タタン

タタン タタン・・・

 

 

「もしオマエに少しでも考えているなら、もっとマトモな発言ができる」

 

タタン タタン

 

「それは、やっていただかないと・・・」

 

タタン タタン

 

「普通は言わねえだろ。手を動かせよ」

 

タタン タタン

 

「足引っ張るだけ、まだマシじゃない?ちょっと知恵遅れの方が愛嬌あるよ」

 

タタン タタン

 

「例えばオマエが猿と一緒にいたら、猿はオマエを同類だと思って敵意剥き出しで襲うね。

同レベルでしか喧嘩できないんだから喜んで受けてやれよ」

 

タタン タタン

 

「これ違いますよ」

「いい加減、覚えましょう」

「どうして皆ができていることができないの?」

「どうして上手く話すことができないの?」

 

 

「どうして?」「ドウシテ?」「どう(して)?」ド ウ シ テ ?

 

____________________

 

 

タタン タタン

タタン タタン・・・

 

 

東武東上線下り ふじみ台-上福岡

 

 

タタン タタン

タタン タタン・・・

 

好きな音に耳を傾けている

鈴虫の鳴き声に似た 懐かしい匂い

 

空気の中で遊ぶことは好きだ

でも

乗り物は好きになれない

 

運ばれるだけの積荷のように

固定ベルトの圧迫が 肋骨に伝わり

僕は数えるために 息をしていると

喉元辺りで笑われる

 

それでも 線路に車輪が噛みつく音の

抑圧を軋ませる悪意に

震えている 幼い恐怖のバルジ

 

君のいる故郷が肺でできていて

膨らんでは萎み

ブラックホールの呼応に

敏感に反応しては 人の願いを回収することを

僕も望んでいるよ たぶん

 

また掴み損ねた

© 2016 大川縁 ( 2016年1月21日公開

作品集『昏睡状態』第12話 (全17話)

昏睡状態

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