愛情 Ⅰ
「伊藤くん、もうここまできたら
君には出家くらいしか残ってないんじゃない?」
再び東京から弾き出される前に一度会っておきなさいと言われた
ずいぶんとお偉いらしい精神科教授先生のきわめて率直な意見を聞きながら
「僕もそんなところを考えてました」
照れ笑いしながら
この馬鹿野郎と
思っている
愛情 Ⅱ
布団から病院までの道のりはまた果てしなく遠いよ
なにせ歩いて十五分もかかる
僕がつきそってやるから今日は行こうネと
前田くんの心意気
診察が終わった 帰り道
「前田くん、それにしてもどうしてそこまで俺を入院させたがるの?」
「君が入院してくれていると、僕が安心するから」
その一言が
いずれかの「我」に私を解放したわけではないが
安らぎの根は
そこにある
愛情 Ⅲ
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