ディビジョン/ゼロ(2)

ディビジョン/ゼロ(第2話)

波野發作

小説

1,211文字

世界はゼロじゃない。ぼくらはゼロだ。なにもない。なにもできない。持っていない。

〈2〉

 

ぼくが言われたとおりのものをつくったとき、上司は、言われただけのものじゃだめだと言った。

何を求められているか考えろと言った。

だから、少し求められていそうなものを付け足した。それはいらないと言われた。

 

社内でプレゼンをすることになった。上司に、未完成でいいので、デモをやれ、と言われたんだ。

起動画面ができていなかったので、ダミーですと説明をした。

社長は、できてないなら見ないので、できてから呼べと言って去った。

 

上司は、起動画面ぐらい作っておけよとぼくに怒った。

未完成でもいいけれど、完成しているようには見えるようにしろと言った。

どのぐらいかかるかと聞かれたので、三ヶ月は欲しいと言ったら、来週までに出せと言われた。

 

一週間では完成しなかった。毎晩泊まり込んでも、間に合わなかった。

金曜に上司が席まで来て、土曜の夕方に社長に見せるから、どうにか体裁を整えろと言った。

どうすればいいか聞いたら、紙の資料を渡せば少しは伝わるだろうと言った。

 

プログラムを中断して、パワポで紙の資料を作った。

普段やりなれていないので時間がかかってしまった。

それでもどうにか朝にはできた。プログラムも夕方までにはなんとかなるだろう。

 

顔を洗って朝飯を食べていると、上司が出社してきた。

ぼくが食事をしているのを見て、余裕だなと言った。

夕食も食べずに資料を作ったことは、言えなかった。

 

資料はできているかと聞かれたので、プリントを見せた。

なんでパワポで作るのかと怒られた。カラーで無駄だとも言われた。

A4ペラ1枚の資料でよかったのに、と呆れられた。

 

肝心のプログラムはと聞かれて、夕方までにはなんとかなると答えた。

まだ本体ができあがっていないことをなじられた。

徹夜したのに、何もいいことはなかった。眠い。

 

午前中いっぱいやって、あとは起動画面を作ればいいというところまできた。

とりあえずプログラムは目的を果たせるところまできたのだ。

さすがに眠いので、少しだけ仮眠を取ることにした。

 

声をかけられて目覚めると、30分ほど経っていた。

深く眠ったので頭が冴えてきたようだ。さて起動画面を作ろうか。

上司は、社長が早めに来たので、すぐに見せろと言った。

 

パワポの資料を社長に渡した。表紙を眺めて、中身をペラペラした。

ろくに読まずに、すぐに動かせというので、プログラムを起動させた。

先週と同じ未完成の起動画面が、ディスプレイに表示された。社長は立ち上がって、出て行った。

 

月曜日から会社を休んだ。火曜日も休んだ。

水曜日に上司から電話が来た。木曜日に社長から電話が来た。

金曜日に退職願いを書いて、ポストに入れた。

 

 

2015年7月29日公開

作品集『ディビジョン/ゼロ』第2話 (全10話)

© 2015 波野發作

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