郡山直人

PALS(第1話)

村星春海

小説

1,865文字

僕の序章。自分との対話を始め、僕は自分を絡めとる影を探す。

 人が生きる理由は何なのだろうか。僕はそんな簡単そうで難しい問題をひたすら考えることが多々あった。どのみち大学に行っていたのは、入学から半年かそれくらいまでで、行かなくなって一年は経過した僕に思い込む時間はたくさんあった。そのおかげで、今ではすっかり朝から晩までを部屋で過ごす人間になってしまった
 日課のように考え込んで答えを出せずに問答が終わった後、ふと立ち上がり居間の窓から外を見る。外を見るとまず目に飛び込むのは、この住んでるアパートとどっちが古いのか考えさせられるほどに年季の入った木の電信柱だ。割と目と鼻の先にあるこの電信柱はすぐに目に入るのだが、あまりにも毎日視界に入ってくるため、気分が憂鬱になった時などは、心の中で話しかけたりもした。側から見たら相当危ない人間なのだが、そうでもしなければ心が落ち着かなくなる時もあるのだ。
 あと目に入るのは、通学路を往来する学生たちだ。この学生たちこそ、僕が一番鬱になる存在で原因だ。なぜまともに大学へ行かなかったのか、行けなくなったのか。今となってはよく覚えていない。
 高校までは割と普通のよくある地味で目立たない生徒の一人。僕としては、田舎を飛び出して都会の大学へ来てみればいろいろ変わると思っての行動を取ったつもりだったが、大して学力もない僕は、Fランクの大学にしか入れなかった。それでも大学は大学だと思い、最初の半年くらいかは真面目に通ったが、ある日を境に、足がそちらに向かなくなる。それはまるで草の生い茂る獣道に足を取られた様だった。
 ここ最近は理由について考察している。
 最近思いついた仮説は、結局自分というものは大学へ行ったからといってなにか変わるわけではなく、自分を変えるのは自分の考え次第である。そして僕にはその環境が自分を変えてくれるから、自分ではなにもしなくても大丈夫だという考えがあったからではなかろうか。
 早い話が、主体性がないのだ、僕には。
 とにかく僕は誰の責任にせよ、自分で自分の足を絡めてしまい、この部屋から必要以上に出ることは無くなった。
 ひとしきり不登校の原因を巡らせたあと、コーヒーでも飲もうと台所へ向かうが、一番重要なコーヒーそのものを切らしていることに気づいた。うんざりするも、この憂鬱になった気分を変えてくれるものが他にない以上、買いに行くしかなかった。ぼろぼろの財布を手に持ち、Galaxys6をポケットに突っ込んで家を出る。外階段の乾いた音を聴きながら降りて、路上へ出る。時間は昼でもないし夕方でもない、そんな中途半端な時間帯。
 僕ぐらいの年齢の人間が歩いているような時間ではない。本来なら仕事をしているか、学校へいっているかのどちらかのはずなのだ。
 
 いつものコンビニへとやってきた。店員はだるそうな顔で、客を仕分けをするように対応している。立ち読みをしてる客もいる。買う気もないのに読んでいるというのは、迷惑なものだと思った。
 買う銘柄は決まっている。目をつぶっていても探せる自信がある。そしてコーヒーを手に取り、仕分け中のレジへ並んだ。コンビニ店員に仕分けの様な会計を済ませ、コンビニをあとにして外へ出る。
 正面から学生の集団、恐らく高校生か。女子特有の黄色い声を響かせながら歩いている。時折、その色のついた声が無性に癪に障ることがある。理由を自分で問答することもあったが、自分を満足させれる答えは未だに浮かんでこないが、おそらくただの難癖で嫉妬も含まれるだろう。
 
 自宅アパートへ戻ると、鍵が開けっ放しになっていた。とはいえ取るものなど何一つない。盗られて困るものと言えば、古いステレオだけだ。外に出ることもあまりない僕にとって、そんなに必要なものはなかった。衣類ですら、外に出ないのなら必要はない。
 一応泥棒が入ってないかを確認すると、コンロでお湯を沸かす。かすかなノイズのような音から、大きい煮沸音が注ぎ口の白い湯気と共に吐き出される。
 そして僕はそれをただ当てもなく見つめていた。この湯気な様になれないだろうか。そのまま消えてしまって、大気に含まれて、そしてまた雨となって地表に降り注ぎ、その時にはまた新しい自分になっているのだ。今とは違う、ポジティブな自分。
 ガス代が気になり火を消す。熱い湯をカップに注ぎ、立ち上るコーヒーの香りを吸い込んだが、一度憂鬱になった気持ちは、結局、好転しなかった。ガスの元栓を閉め、カップ片手に居間の窓から外を見る。外は夕方に向けて歩みを進め、学生たちの影を伸ばしていた。
 僕はカップの湯気というフィルターを通して彼らを見る。

2019年6月27日公開

作品集『PALS』第1話 (全8話)

© 2019 村星春海

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