吉増剛造が舞踏家の土方巽にインスピレーションを受けた展示会「ネノネ」が5月14日~6月8日まで、都内ソーシャルイシューギャラリー「SIGNAL」で開催される。

 吉増剛造は1939年東京生まれの詩人。1964年『出発』でデビュー。代表作に『黄金詩篇』(1970年、高見順賞)、『熱風 a thousand steps』(1979年、歴程賞)、『オシリス、石ノ神』(1984年、現代詩花椿賞)、『螺旋歌』(1990年、詩歌文学館賞)、『長編詩 ごろごろ』(2004年)、『裸のメ モ」(2011年)ほか、写真、ビデオ、銅板彫刻、絵画-原稿などのマルチメディア作品も多数。朗読パフォーマンスの先駆者としても知られ、音楽家や舞踏家、演出家、映像作家などとの共演も多い。

 土方巽は1928年秋田県生まれの舞踏家。高校卒業後にモダン・ダンスを学び、舞踏家・大野一雄の初公演に衝撃を受け19歳の初上京を経て、24歳で上京。58年に土方巽を名乗り、59年に津田信敏近代舞踏学校、のちのアスベスト館を初訪問。ダンサーではなく、舞踏家として活動する契機となる。61年に暗黒舞踊派(のち舞踏)を結成。全身を白く塗った「危機に立つ肉体」をもって従来の舞踊を覆し、独特の舞踏を確立した。86年没。

 今回の展示で吉増剛造がインスピレーションを求めたのは、舞踏家土方の肉体から放たれる特異な「声」。そこに影響を与えた日本文化に微かに息づく「声なき声」や「音なき音」。それは瞽女や娘義太夫、イタコといった歴史に消えてしまいそうな小さな「音の根」=「ネノネ」。

 小さな声に耳を傾けることが必要とされる現代社会において、詩人と舞踏家、日本を代表するアーティストの表現を通じて「ネノネ」にふれることで鑑賞者に創造性の芽を育む機会を提供する。

 ギャラリーでは吉増剛造による書き下ろしの原稿展示や公開制作に加えて、土方に関する資料展示も行う。

 なお、期間中は5月17日「MARYLIA x 吉増剛造 ライブパフォーマンス」、6月1日「小林康夫(東京大学名誉教授) x 吉増剛造 トークショー」も行われる予定。イベントは事前申し込みが必要とのこと。