日本経済新聞社が主催する「第11回星新一賞」の受賞作が決定した。【一般部門グランプリ】に柚木理佐「冬の果実」、【ジュニア部門グランプリ】に竹腰奈央「ライトコート」など、9作が選ばれた。

 日経「星新一賞」は、形式やジャンルにとらわれない理系的な発想力、想像力を問う新しい文学賞として2013年に創設された。

 第11回は2023年6月25日から10月2日まで応募を受け付け、応募作品は一般部門編、ジュニア部門編で、総数は1389編。AIによる創作と認められた作品は、前回の32から70編と倍近くになったが入賞はなかった。

 最終審査員は白鷗大学教授岡田晴恵、小説家・SF考証の高島雄哉、作家の荒俣宏、挿絵画家の佐竹美保、作家・演出家の鴻上尚史、日本経済新聞社編集委員の滝順一6人が務めた。

 「冬の果実」は、氷河期を迎える未来の地球、「後天性体温調整機能不全症候群」におかされた僕は、低体温症による死を待つばかりだ。僕の治療にあたる博士は、病の流行はこの星が再び全球凍結する前兆だとし、希望を失いかけていた。別れの日、一つのリンゴが手から手へ渡される。だが、博士の手の中でリンゴは氷の球に姿を変えてしまう…。

 「ライトコート」は、パスワードは「脆弱なセキュリティ」とされ、生体認証が主流となった未来。世界では、自身の生体情報を隠すために黒い光を身にまとわせ体に目隠しをする「ライトコート」を着用するのが常識となっていた。そんな世界に生きる中学生みるきーのもとに、一人の転校生、新田翼がやってくる。彼は、ライトコートを着ない「ノーウェア派」だった――。「自分らしく生きるって、何?」そんな思いに悩む、中学生たちの物語。

 ほか、【一般部門優秀賞(アマダ賞)】に木下充矢「彼方には輝く星々」、 【一般部門優秀賞(旭化成ホームズ賞)】に玖馬巌「ポラリス」、【一般部門優秀賞(図書カード賞)】に鷹羽玖洋「星の灯の狭間にて」、【ジュニア部門準グランプリ】に田中文瑛「おいしい世界の歩き方 東京」、【ジュニア部門優秀賞】に岡田頼和「見えない力」、【ジュニア部門優秀賞】に岩本名央「エーアイさんへ」、【ジュニア部門優秀賞】に名もなき佐助「星になる」がそれぞれ選ばれた。

 一般部門グランプリは賞金100万円が贈られる。なお、受賞作は3月上旬以降、電子版書籍サイト「honto」で配信予定(無料。利用登録が必要)。