社会学者で立命館大教授の立岩真也たていわしんやが7月31日、悪性リンパ腫のため京都市で死去した。62歳だった。

 新潟県の佐渡島に生まれ、東京大、同大学院で社会学を専攻。障害者や難病患者にとって望ましい社会の在り方を探究した。

 2016年、相模原の「津久井やまゆり園」で植原聖死刑囚による45人を殺傷した障害者殺傷事件の発生時、安楽死を肯定するような議論を痛烈に批判。批評家の杉田俊介と、障害者差別などの歴史的観点から事件を検証する共著『相模原障害者殺傷事件――優生思想とヘイトクライム――』(青土社)を上梓した。

 そのほか、著書に『私的所有論』や『良い死/唯の生』、共著に『ベーシックインカム 分配する最小国家の可能性』など多数。90年代から現在は一般的に話題に上がるようになった、障害者の権利やケアの議論について提言していた。

 まだ62歳という若さでの訃報に驚いた。先の芥川賞受賞作、市川沙央『ハンチバック』は「読書のバリアフリー」について社会に問いかける作品だった。やっとこのような議論が一般化した感があっただけに、非常に残念である。