集英社の文芸誌『小説すばる』1月号に翻訳家カメイトシヤのエッセーが掲載された。

カメイトシヤ氏(Kamei Toshiya)と言えば、破滅派に関わっている方なら名前は既に御存知だろう。カメイ氏は高橋文樹、斧田小夜、Juan.B(髙井ホアン)、波野發作、牧野楠葉ら数々の破滅派所属作家の作品を翻訳し、ネット・誌面問わず海外の文芸界へ送り届けている。翻訳は英語圏のみならずスペイン語圏にも送られており、カメイ氏を通じて破滅派の作家は海外と関係を結ぶことが出来るようになった。

そんなカメイ氏のエッセー「日本発インディーSFを世界へ」が、『小説すばる1月号』に掲載されている。エッセーでは、日本のインディーSFを海外に紹介する過程が紹介されておりとても勉強になる。さらに、破滅派との関係についても書かれている。カメイ氏はアーカンソー大学で文芸翻訳を専攻し、その後ラテンアメリカ文学の翻訳を専業としてきた。そして日本文学の翻訳にも着手しようとする中で、アメリカにおける日本文学の情報の少なさや、ネット上の小説サイトにおける著者とのコンタクトの取りづらさに苦労していた。しかし「破滅派」と出会った際、小説サイトとして分かりやすい構造になっていることや、著者とのコンタクトの取りやすさが意識されており、信頼性が高かったとのことである。高橋文樹氏の面目躍如ともいえるだろう。他にも翻訳家として興味深い数々の点について書かれている。海外への小説展開やSFに興味のある者はもちろん、破滅派関係者なら是非購入し読んでおきたいエッセーと言えるだろう。

また、次号となる2月号では、高橋文樹と佐川恭一の作品も掲載される予定である。来月も是非『小説すばる』に注目したい。2021年は破滅派発展の一年となるだろう。

『小説すばる』1月号は全国書店で販売中である。カメイトシヤ氏と、破滅派同人の今後の活躍に期待したい。