11月4日、作家・村上春樹が母校早稲田大学主催による記者会見に出席し、自身が収蔵してきた2万点の資料を早稲田大学に寄贈することを表明した。国内での記者会見は37年ぶりとなる。

早稲田大学の鎌田薫総長と並ぶ記者会見の中で、村上春樹は自身の原稿や蔵書、世界各国で50カ国語以上に翻訳された著作、収集してきたレコードなど様々な資料を大学に寄贈することを明らかにした。寄贈品は数度に分けて徐々に寄贈されるという。この総数1万点以上に及ぶ寄贈品を活用するため、早稲田大学では研究センター「村上ライブラリー」(仮)の設置を検討しているという。

会見の中で村上は寄贈に至る経緯を説明し、事務所スペースの限界や自身に子がないための資料散逸の恐れから寄贈を思い立ったことを語った。また、早稲田大学在学時(第一文学部映画演劇科)の思い出にも話が及び、7年かけて卒業させてくれた早稲田大学の「ゆるい」学風や恩師との思い出を回想した。村上が国内での記者会見に参加するのは、大森一樹による映画「風の歌を聴け」(1981年)の記者会見以来37年ぶりであり、早稲田大学に対する責任感から会見への参加を決意したという。

毎年のノーベル文学賞選考や、今年のニューアカデミー賞の選考辞退など、現在も様々なニュースに事欠かず注目を集め続けている村上春樹であるが、今回の寄贈はさらに彼の作品世界を知ることができるきっかけとなりそうだ。