2017年11月26日、静岡県三島市の大岡信ことば館が閉館した。同館は文学の枠にとらわれず「ことば」に関するユニークなイベントを多く開催する文学館として知られてきたが、来館者の伸び悩みにより幕を閉じることとなった。大岡本人もこの4月に世を去っており、大岡ファンにとっては悲報がつづいた形となる。

大岡信ことば館は、三島市出身である大岡信の業績を讃えて2009年10月に設立された文学館だ。近隣に本部を置く縁から通信教育事業のZ会がスポンサーとなっており、ことば館もZ会の自社ビル内に置かれていた。大岡が逝去したからこそ今後ますます存在感を増していくようにも思えたが、理念だけでは運営できないのが民間のつらいところだろう。当初の想定来館者数を上回ることはできず、苦渋の経営判断となった。

公式に閉館がアナウンスされたのは最終日のわずか2日まえ、11月24日のことだった。ただし11月はじめには複数のメディアで閉館の報道があったので、心の準備ができていたファンも多かったかもしれない。同館の最後の展覧会は「大岡信 追悼特別展」となったが、関係者によると閉館が決定したのは大岡の存命中だった今年1月とのことなので、なんとも不思議な巡り合わせになった。

同館が所蔵していた資料の数々は、大岡が生前に教授を務めていた明治大学に寄贈されるという。明大では、2020年を目処に「大岡信文庫(仮)」を開設する予定だ。