『暗黒女子』は秋吉理香子の同名小説の映画化作品である。現在何かと世間を騒がせている清水富美加が主演ということで公開が危ぶまれたが、予定通り4月1日に公開されることが発表された。21日には主演不在のまま完成披露試写会が行われ、W主演の飯豊まりえが涙を見せる一幕もあった。W主演だったおかげで、舞台挨拶も何とか形になった訳だが、このW主演というのがストーリーのミソでもある。

秋吉理香子『暗黒女子』は「イヤミス」の傑作として名高い。「イヤミス」とは「嫌な気分になるミステリー」のことで、読後感がすこぶる悪い。格式あるミッション系女子高が舞台であり、初めのうちは、その煌びやかな空間の中で王道ミステリーを楽しむことができるのだが、ラストで全てひっくり返される。映画公式サイトでも「あなたの予告を全てぶち壊す驚愕のラスト24分」と言ってしまっているが、出来ることならネタバレ無しで楽しむべきであろう。結末を知ってからもう一度読めば、全ての叙述トリックが判明する。

小説の読み方について、最も意見が分かれるのがミステリー小説であろう。普通の小説と同じように、どっぷりと世界に入り込んで読む方法。文章のひとつひとつに気を配り、客観的な目で犯人を推理しながら読む方法。ミステリー小説としての楽しみ方は後者が正しいのかもしれないが、僕は前者の読み方しかできないので、いつも作者の意図に絡みとられてしまうのである。僕にとってミステリー小説は推理小説ではなく、サプライズを与えてくれるエンタメ小説に過ぎない。ちゃんと推理を楽しんでみたいと思う一方で、素直に作品を楽しむことができなくなってしまうのではないか、という気がしてしまう。やはり意見が分かれるところだ。答えは出ない。コガネムシとカナブンの違いのようなものである。どっちでもいいだろう。

まさかこんな形で注目されるとは思いもしなかった映画「暗黒女子」。ある意味では色んな楽しみ方ができるようになったと言える。その結末を知らない人は、既に原作を読んでいる人から「全部、言っちゃうね。」されないように気をつけよう。