今月は5誌が発売。

新潮2016年11月号

  • 第48回新潮新人賞が発表。受賞作である鴻池留衣「二人組み」、古川真人「縫わんばならん」の2作品および受賞者へのインタビュー、そして選評が掲載されている。
  • 第24回萩原朔太郎賞も発表。日和聡子の「砂文」と選評が掲載。
  • 創作は、金井美恵子、円城塔、滝口悠生ら。
  • 連載小説では、黒川創「岩場の上から」が今号で完結。
  • 小野正嗣によルポルタージュ「東京スカイツリーの麓で――あるコンゴ人難民の受難の物語」も今号の目玉のひとつといえるだろう。日本の難民問題について切り込んでいる。
  • 評論に佐々木敦、大竹昭子、大城立裕など。

文學界2016年11月号

  • 阿部和重の新連載「Orga(ni)sm」が開始。「シンセミア」「ピストルズ」に次ぐ神町トリロジーの完結編と銘打たれている。
  • 創作は中原昌也、杉本裕孝、渡谷邦ら。
  • この春に文學界新人賞を受賞した砂川文次の受賞第一作「熊狩り」も掲載。
  • 特集は「映画 美女と色男」。新作『ダゲレオタイプの女』が公開されたばかりの黒沢清のロングインタビューが目玉か。ちなみに『ダゲレオタイプの女』については新潮でも佐々木敦が評論を寄稿している。ほか、塩田明彦×白鳥あかねによる対談「日活ロマンポルノは永久に不滅です」も。
  • エセーに西村賢太、小山鉄郎ら。筆者個人としては高橋弘希の「追想 syrup16g」に興味を惹かれる。

群像2016年11月号

  • 前号の創刊70周年記念号に力を入れたためか、今号ではこれといった特集などはない。
  • 創作に岡本学の中篇「再起動」、連作完結となる町田康「ホサナ」など。
  • 髙樹のぶ子×佐藤優による対談「小説における愛と冒険飛行」も掲載。
  • 大澤真幸の連載「〈世界史〉の哲学」は今号から近代編に突入している。
  • 連載小説では、羽田圭介の「コンテクスト・オブ・ザ・デッド」が今号で完結。
  • ほかは、いくつかの随筆や書評、連載小説が掲載されているのみの通常営業。

すばる2016年11月号

  • 第40回すばる文学賞が発表。受賞作である春見朔子「そういう生き物」と佳作であるふくだももこ「えん」が掲載。
  • 創作では鴻上尚史「オセローとジュリエット」が掲載。演出家を主人公とした作品であり、4作目の小説にしてついに本業である演劇をモチーフに選んだ点に注目したい。
  • 若松英輔による新連載「霧の彼方」では、没後20年が経過しようとしている作家・須賀敦子の功績を辿っていく。
  • 奥泉光+いとうせいこうによる人気コンテンツ「文芸漫談」では、森鴎外「舞姫」が取り上げられている。
  • 海外作家シリーズではレニングラード生まれのキューバ文学者アナ・リディア・ベガ・セローバの「蝕」(久野量一・訳)を紹介。

文藝2016年冬季号

  • 第53回文藝賞が発表。受賞作である町屋良平「青が破れる」と受賞の言葉、そして選評が掲載。
  • 長野まゆみの新連載「銀河の通信所」は、宮沢賢治をモチーフにした通信小説。公式サイトの梗概を読んでもよくわからないのだが興味は惹かれる。
  • 創作には、中長編に谷崎由依、佐川光晴、笙野頼子。短編に篠原勝之、片岡義男、川﨑大助、藤野可織、中原昌也というラインナップ。
  • エセーでは、「ぼのぼの」等で有名な漫画家・いがらしみきおによる「ぼんやりした不安」が注目か。
  • 特別対談として木皿泉×羽田圭介「脚本家から小説家へ、小説家から俳優へ!?」。タイトルから内容を想像しづらい対談だが、果たしてどのようなトークが繰り広げられているのか。

以上、2016年10月発売の5誌について概観をお伝えした。