佐賀・古湯温泉の「泊まれる図書館」プロジェクトは2016年6月21日(火)、クラウドファンディングでの目標金額160万円を達成した。これは築110年の古民家をブックカフェ兼宿泊施設として利用する計画で、書籍購入費および本棚制作費の支援を目的としたものだった。予算の目処がついたことで、いよいよ泊まれる図書館はオープンへの道筋をつけたことになる。

この「泊まれる図書館」プロジェクトは、Webデザイナーであり古書店「ひとつ星」の店主でもある白石隆義氏によって起ち上げられたものだ。昼はブックカフェとして利用してもらい、夜には1日1組限定で宿泊客を招く構想だという。漫画ならばインターネットカフェに行けば夜通し読むことができるが、一般的な書籍ではそうもいかない。そこで、図書館に泊まることができれば楽しいのではないかと行き着いたのが、「泊まれる図書館」というコンセプトだった。

2015年2月にアイディアを公表して以降、白石氏はさまざまな候補地を視察した。そんな中から選ばれたのが、この古湯温泉だった。温泉と図書館という組み合わせの妙と、山合いでありながら福岡市内からのアクセスも良いという立地。本に囲まれながら憩いのひとときを過ごす場所としては理想的だった。

また、同時に白石氏には、古湯温泉に活気を取り戻してもらいたいという意図もあるようだ。全盛期には30軒を数えた温泉旅館が現在では半数以下に減り、メインストリートもシャッター街となってしまっているのがこの温泉地の現状だという。そこで、観光客を増やして地域を活性化しようというのが狙いだ。

出版不況の時代だからこそ、人々と本との関わり方はよりパーソナルな方向で多様化している。だが、公立図書館は立場上あまり突飛なことをするわけにはいかない。その隙間を埋めてくれるのが、この「泊まれる図書館」のような民間による新しい試みなのだろう。本を愛する人間の一人として、今後も動向を見守っていきたい。

追記(2016年6月29日)

泊まれる図書館の公式Twitterより「ブックカフェではなくあくまで図書館」とのご指摘があった。誤解を招きかねない記述をしたこと、謹んでお詫び申し上げる。

貸出も行うとのことで、本棚にどのような個性的なタイトルが並ぶのか、そのラインナップにはますます注目だ。引き続きオープンまでの進捗を追っていきたい。