2016年5月28日(土)より、東京・豊島区立中央図書館で特別展示『ハンセン病と文学展』がはじまっている。毎年6月25日を含む1週間は「ハンセン病を正しく理解する週間」に設定されているが、それに先駆けてハンセン病関連の文学作品を特集したものだ。

ハンセン病は顔面や四肢に知覚神経麻痺を引き起こす感染病で、日本では長らく感染者の隔離政策を行ってきた。実際には戦後まもなく特効薬が確立されていたにもかかわらず、隔離政策は1996年まで続けられており、一度でもハンセン病と診断された人は子供を作ることも許されなかった。そうした事情から、いまだに世間ではハンセン病者に対する差別や偏見が根強く、ハンセン病への理解を深めてもらうのが目的だ。

取り上げられているのは、遠藤周作『わたしが・棄てた・女』、川端康成『寒風』といったハンセン病をモチーフにした小説や、自身がハンセン病であり川端の作品のモデルともなった北條民雄の作品集など貸し出し可能な約100点だ。また、当時の隔離療養所の機関誌もあわせて展示されている。

ハンセン病差別に対して具体的なイメージを描くことのできない世代も増えているだろうが、近代文学と差別には密接な関係がある。ハンセン病文学について知ることは、日本の近代文学をより深く知ることにも繋がるはずだ。