敗戦間もない一九四六年五月、鎌倉市材木座光明寺に私立の専門学校が誕生した。その名は「鎌倉アカデミア」。

敗戦後新しく芽生えた市民による市民のための市民の民主主義的教育を目指し、文部省の統制から外れる形での開校であった。文学科、産業科、演劇科、映画科の四課が存在し、校長は戦前思想弾圧に苦しんだ哲学者三枝博音が勤め、講師陣には服部之総、西郷信綱、千田是也、村山知義、吉野秀雄らと言った戦前戦後を結ぶ文化人達が並んだ。著名な卒業生には、作曲家いずみたく、あらゆるジャンルで声を吹き込み続けた声優勝田久、「エレキの若大将」の監督を務めた映画監督岩内克己などがおり、鎌倉アカデミアは戦後の文化史の始めに多大な功績を残した。

しかし当初から財政難に悩まされ、生徒にも学費を払えない者も多く、講師陣も無給で教壇に立つ事があった。一九五〇年、惜しまれつつ鎌倉アカデミアは閉校した。

今年で開校から七十周年を迎え、かつて鎌倉アカデミアが存在した光明寺に卒業生を含む市民たちが集まり、六月四日に記念祭を行う事となった。実行委員長は演劇科一期生の加藤茂雄さん(90)。在りし日の鎌倉アカデミアの授業を再現する催しや、鎌倉アカデミアから巣立った卒業生により一九四八年に立ち上げられ「ひょっこりひょうたん島」などの作品で知られる人形劇団「ひとみ座」の公演が行われる予定である。

記念祭は鎌倉市材木座光明寺にて六月四日午前10時~午後5時半まで開催。参加費千円(小中学生は無料)。