包まれる感触の中眼を醒ますけれどたしかに、今しがた夢の中で私は刺された、刺されたのだ鋭利な刃物で。それはまるでトマトにフォークを突き刺す感触、ぷちゅっと中身が、そう中身が色々と零れてやるせない。ああ今夜は満月なのだなぁ、とふっと思う瞬間に唐突に、気づけばいつも刺されているのかもしれない。赤い鮮血、青い肌、灰色の瞳、鈍い痛み。死は、それほど怖くないと誰かが粋がるそういうのはもういいんだって面倒くさいから。嘯いた分だけ得をするなんて法則は、この世には存在しないのだから。存在しないといえばこの私。存在している気がしませぬ。何時からか。まるで水母のように水面を漂う呼吸は皮膚から出来るようになれば良い、そうそれが良い。肺はすでに酸っぱいもので満たされているから。水母はまた海月と書きもするのであってそれはなんだかすごく心地よい字面、そういうのを好む私の心はまだ大丈夫。たぶん。
肺は二つ、手も二つ、足も二つに眼も二つ、耳も乳房も二つ二つというのはどういうわけか。
2という数字のその純朴さ、誠実さ、愚鈍さ、曖昧さ、曲線と直線の出会い。大事だから二つ持てばいいというのかい?なんだかそれは少し狡いよ。それならば私は潔く、心臓は一つで十分だ。二度死ぬなんてまっぴ らごめん。一度ですべて、捨ててやろう。
この世界にさよならを言う前に少し、夜の冷たい風で頬を撫でて愛でてすべて。
さてと正気に戻ったら、夢の中で殺された私のお弔いをするとしよう。骨はすべて、泡に還すよ。
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