破滅派でこれまでなんどかお問い合わせをいただいたのですが、個別の作品に対して「自分のことが書かれているので削除してほしい」というご意見がありました。三島由紀夫の『宴のあと』事件のような、プライバシー侵害に関する訴えです。

これに関して破滅派の基本方針を以下に提示します。

  • 破滅派は特定の個人に関する情報を無許可で記載しているというただその一点のみによって作品の公開を停止することはありません。かならず著者および起訴人の意見を聞き、作品を吟味した上で判断を下します。
  • 両者の合意が形成されない場合、破滅派は作者と起訴人の間で法的な手続きに則ることを推奨します。そして、破滅派はその決定に従うことを基本方針とし、合理的な理由が存在する場合に限り、破滅派編集部と著者の間でその責任の分配をします。

上記の方針を掲げているという点についてまずご理解ください。

破滅派での対応手順

破滅派では、「自分のことが作品に書かれている」という訴えを聞いた場合、次のような対応を行います。

  1. ○○さんがあなたの作品に自分のことが書いてあると言っていますと作者に伝えます。
  2. 作者がなんらかの対応(作品の修正、非公開または削除、無視)をするはずなので、それをあなたに伝えます。
  3. その対応にあなたが納得いかない場合、被害の深刻度をお聞きします。その上で作品を読み、被害の深刻度と作品の価値をはかりにかけ、強制的に破滅派が公開停止するかを判断します。
  4. 強権的な公開停止に至らなかった場合、作者に対しあなたが合意していないことを伝えます。
  5. あなたがその対応に納得いかない場合、両者間での解決を模索します。
  6. 解決が困難な場合、法律的な手続きに則っての解決を提示します。

以上をご理解いただき、それをふまえて破滅派が考慮するポイントを挙げていきます。

  • 文字列上の一致だけでは深刻な被害が発生しているかどうか不明であり、また、偶然の一致の可能性もあります。したがって、かならず被害の深刻度をお聞きします。
  • 被害が深刻かどうかは、事実の披瀝(ex. 山田太郎という人物が特定の会社の所属に所属している)だけでは決まりません。また、起訴人が自ら被害を広げるような行為をしていた場合、被害の深刻度は下がります。たとえば、twitterで「○○という作品で私の名前が使われています! 許せません!」というような行為です。
  • 状況証拠によって明らかにあなただと判明してしまう記述がある場合、その状況のわかりやすさ(=前提知識を共有しない人でもわかってしまうか否か)によって深刻度に重み付けをします。たとえば、あなたが羽生結弦という名前で「66年ぶりに男子フギュアスケートで連覇を果たした男」として描かれてる場合と、中川開発株式会社の営業第二部に勤務する近藤茂美という派遣OLとして描かれている場合では、深刻度が異なります。
  • 深刻度は、一般的な基準に照らし合わせて決定します。あなたがDVから逃れるために生活していたり、特定の出自を隠すことでなんとか社会的地位を保っていたり、もう社会から隔絶されたいとまで思い詰めるほどの重篤な障害を抱えていたりするのならば、事実の披瀝それ自体で十分深刻だと言えますが、あなたが公務員で実は風俗に通っているということが披瀝されるのならば、深刻度(というより同情ポイント)は下がります。
  • 起訴人と作者の個人的な関係にもとづく事実の披瀝は、深刻度がほぼゼロになります。たとえば、あなたが昔いじめていた人があなたと同じ名前の人物を作中でいじめっことして描いた場合、また、あなたが昔寝ただけの女があなたのような人物のセックスが下手くそと作中で描写した場合がそれにあたります。
  • あなたがたとえ深刻な被害をうけたとしても、作品が世の中に公開されるべきと破滅派が判断する場合もありえます。その場合は法廷などのしかるべき場所に訴えていただければ幸いです。

 

破滅派に限らず、自分とまったく同じ名前が小説に出てきたら、それはそれは驚くと思います。もしその人物が悪し様に書かれていたら、あなたの怒りは一入ひとしおでしょう。しかし、ただそれだけで破滅派が作品を非公開や削除にすることはありません。ぜひこのガイドラインに目を通した上でお問い合わせいただければ幸いです。

また、これは起訴人ではなく作者に対するメッセージなのですが、モデルと良好な関係を築いておくのは重要です。

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