チカラはチカラを持ったのか

応募作品

諏訪靖彦

エセー

1,276文字

2022年6月名探偵破滅派参加作品。課題図書は西村京太郎『天使の傷痕』

 

前回の名探偵破滅派で西村京太郎の『天使の傷痕』が選ばれたとき、中高生の頃に西村京太郎のファンだった親父の本棚にあるのを読んだかもしれない、もし読んだことがあれば記憶力を試す目的で参加すると言ったが、出題範囲を読んでも全く記憶にないので恐らく読んではいないと思う。もっともアルコールやなんやらで記憶を失っている可能性もないとは言えない……。

 

出題範囲に書かれているとおり、山崎昌子は三角山で熊を仕留める罠を応用したトリックで久松実を殺し、牛乳瓶に睡眠薬を入れてアパートの管理人、田熊かねを殺した。フーダニット、ハウダニットは解決されている。よって、今回推理すべき問題はホワイダニットである。

昌子は久松との関係を清算するために殺害したと自供した。当然偽証であるが、そうまでして隠さなければいけないこととは何だったのか。それは昌子の姉、時枝が産んだ子供の存在だ。多摩養育園前で撮られた写真の女はアルドリン(サリドマイド?)児を産んだ昌子の姉、時枝であり、それをネタに久松は昌子を強請っていたのだ。

時枝の嫁ぎ先は閉鎖的な部落の地主、沼沢家である。村の駐在署員が田島に時枝の最初の子は流産したと言っていたが、時枝が最初に産んだ子はアルドリン児だった。沼沢家は家の格を危うくすると考え、産まれたばかりの子、チカラを昌子に託して流産したことにした。昌子が急に上京した時期と時枝が第一子を流産した時期が一致することから、昌子は時枝からチカラを託されると直ぐに東京に向かったと考えられる。

昌子は東京で一人チカラを育てるつもりでいた。しかし、当時の社会は障害児に優しくはなかった。それどころか差別的な扱いを受けることすらあった。昌子はチカラを自分で育てることを諦め多摩養育園に預けることにした。

久松はアルドリン児や小児まひの子供を持ったことに後ろ暗い思いをしている人の心に付け入り強請っていた。雑誌社で原稿用紙にいたずら書きした「天使は金になる」とはそういった意味だ。

久松は当初、チカラの存在を恋人(田島)に知らせると昌子を強請り二十万円を手にするが、昌子が故郷で十万円もの金を用意してきたことを不審に思い調べたところ、チカラは昌子の子ではなく時枝の子だと知る。そして時枝の嫁ぎ先が地主だと分かると、もう一度、昌子を時枝を沼沢家を強請ることにした。昌子はこのままでは強請られ続けると思い久松を殺害することにした。

久松が多摩養育園前で撮られた時枝の写真を入手したのは、時枝がチカラに会うため多摩養育園を訪れたときに盗み撮りしたのか、もしくはチカラが母親の写真として持っていたものを手に入れたかどちらかであろう。

チカラという名前は障害に負けず力強く育ってほしいとの願いから付けた。また、「A、B、C、」の「C」は「Chikara」の「C」だろう。

 

最後にプロローグのについては、成長したアルドリン児が製薬会社、もしくはアルドリンを認可した厚生省の役人を殺める前の心理描写と受け取った。それがチカラではないと信じたい。

 

 

以上

2022年6月20日公開

© 2022 諏訪靖彦

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