〈6〉
路地までタクシーを入らせて、クルマを下りた。
通り雨だったので、ぼくがアパートに着く頃には晴れ上がっていた。
むあっとした湿気が肌にまとわりつく。
まだ日が高いが、隣のコンビニでサワーでも買って飲むことにした。
金の心配はとりあえずなくなったのだし、ゆっくり部屋探しでもしよう。
資金さえあればどうにでもなる。
ポストを見えると、今日も大量のDMが放り込まれていた。
ほとんどはぼく宛じゃなく、元同僚たち向けのものだ。
彼らは皆、ある日突然辞めて出て行ったので、あらゆるものがそのまま届くのだ。
そういえば、ローン会社からカードか何かが届くんだった。
すぐ届くのだろうか。
少し面倒な気がした。
部屋に戻り、ざっと見渡してみる。
そういえば、1人になってからずいぶん散らかしてきたな。
誰も来ないので、ちょっと自由に使い過ぎた。明日から片付けよう。
とりあえずテレビをつけて、缶チューハイを開けて飲む。
スナックの封を開けて、ひとつまみ口に放り込む。
ソファにどっかりと座り、一息ついた。
これで晴れて無職だ。自由の身になったわけだ。
もうデタラメな命令を聞く必要もないし、矛盾した指示を受けることもない。
積んだ積み木を壊され続けるような、不毛な業務ともおさらばだ。
収入は途絶えたが、元々そんなに多くはない。
次はもう少しマシな給料の会社に入ろう。休みも土日休めるところにしよう。
契約社員というのもなんだか損のようだ。正社員で探そう。
コンビニに寄ったときに、就職情報誌をもらってきた。
パラパラとめくってみるが、アルバイトの求人ばかりだ。
飲食のところがやたらと多い。IT系もあるが、オペレーターばかりだ。なんだか違うと思った。
ふと目線の先に水槽が見えた。元同僚たちが飼っていた熱帯魚の水槽だ。
魚はとっくに死んだが、水がそのままになっていた。
掃除が面倒でそのままにしてあったのだ。なんか腐ってる気もするが、そのまま置いていこう。
ゴミがすいぶん増えていることにも気づいた。
あとで金を請求されても面倒だから、捨てれるものは捨てておこう。
明日からやれば間に合わないこともないだろう。
2本目の缶チューハイを開けた。スナックも2袋目だ。
テレビは夕方のニュース番組を流していた。どうでもいい交通事故のニュースが続く。
外はまだ明るかった。
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