今月は新潮、文學界、群像、すばるの4誌が発売された。4誌の概観をここで紹介しよう。

新潮 2024年10月号

・【新連作小説】として、高山羽根子「ローレライ」、今村夏子「七月三十一日晴れ」、鴻池留衣「すべてを抱きしめる」、歌舞伎町の歌人SHUNによる「安いボート」が掲載。

・【評論】では、森田真生による新連載「数学する惑星」がスタート。第一回は「地球の言葉で考える」。

・2019年に亡くなった、ドナルド・キーンによる未発表原稿「三十七年後の日本」が掲載。訳・序説は角地幸男。遺品整理で発見された幻の随筆には、日本文学に生涯を捧げた男の孤立感が刻まれていた。

・「第56回新潮新人賞」予選通過作品が発表。

文學界 2024年10月号

・【特集】「インターネットとアーカイブ」として、宮内悠介による創作「暗号の子」、町屋良平×大前粟生×金子玲介による鼎談「デビュー前夜の仲間たち」、phaと藤谷千明のエッセイのほか、阿部和重、TaiTan、能町みね子、グレゴリー・ケズナジャット、最果タヒ、乗代雄介、一穂ミチ、長嶋有ら15人によるアンケート「あの人のブックマーク」が掲載。

・【創作】では、仙田学「また次の夜に」、永方佑樹「字滑り」が掲載。

・【特集】「琵琶湖」では、円城塔×福永信×澤西祐典による鼎談とそれぞれの創作が掲載。

・井戸川射子による新連載「舞う砂も道の実り」、藤野可織による新連載「でももうあたしはいかなくちゃ」がスタート。

群像 2024年10月号

・【特集・おいしい文学。】として、川内有緒、写真=一之瀬ちひろによる新連載「ロッコク・キッチン~浜通りでメシを食う~」がスタート。工藤あゆみの短篇集「胃がドキドキする」、「おいしそうな文学。」と題し、江國香織、くどうれいん、向坂くじら、関口涼子、武塙麻衣子、崔実、土井善晴、堀江敏幸など28人によるエッセイを一挙掲載。

・【創作】では、宮内悠介「宇宙日本煉瓦小史」、くどうれいん「鰐のポーズ」、高橋源一郎「オオカミの」。

・【特集・濱口竜介】として、濱口竜介本人による映画講座「「見つめる」ということ ビクトル・エリセ『ミツバチのささやき』」、木下千花による作家論「二個の者がsame spaceヲoccupyスル訳には行かぬ――濱口竜介の映画世界における時空間とモノガミー」、伊藤亜紗の作品論「感嘆と咆哮」、藤井仁子「『悪は存在しない』の「わからなさ」について」、三浦哲哉の書評「Au hasard Hamaguchi」を一挙。

・【『新しい恋愛』刊行記念小特集・高瀬隼子】として、朝井リョウ×高瀬隼子による対談「小説にひそむ、新しい問い」、ひらりさによる書評「恋愛実在論者の立場から」、町屋良平「フィクションが現実を更新する瞬間――高瀬作品の「リアリズム」について――」、高瀬本人の本の名刺「恋愛の正体」も併せて。

・【『迷子手帳』×『世界の適切な保存』W刊行記念対談】として、穂村弘×永井玲衣による対談「この世界のポテンシャル」。

すばる 2024年10月号

・【特集:旅に出よう 物語に会いに】として、綿矢りさによる紀行「宇野千代の底力」、梅佳代のルポ「のと2024」、上田岳弘の小説「トキシック・フライデー」、石井遊佳の小説「奇遇」、佐藤厚志の小説「月山行」、吉本ばななのエッセイ「珍道中」、温又柔のエッセイ「わたし の/を/は 知らない場所」、乗代雄介のエッセイ「私が旅に持ち歩くもの」、小砂川チトのエッセイ「羽虫と旅する」、大崎清夏のエッセイ「どうぞゆっくり見てください──もうひとつの地震日記」、安達茉莉子のエッセイ「旅と栖が交わるところ──鎌倉・徒歩十五分圏内旅日記」、榎本空のエッセイ「旅の日の朝」、小柳淳のエッセイ「旅と本の幸せなつながり」を一挙掲載。

・【『虚史のリズム』刊行記念対談】として、奥泉光×小川哲による対談「「単純な物語」を捨て、小説世界を構築する」、鴻巣友季子による論考「蝟集する鼠、語られる歴史──奥泉光論」も併せて。

・「第48回すばる文学賞」二次予選通過作が発表。

・岡野大嗣による新連載「夜なのに夜みたい」がスタート。

以上、2024年9月発売の4誌について、概観を紹介した。読書の一助になれば幸いである。