高橋は嫌なヤツだった。はじめて顔を見たときに、こいつとは合わないと即座にさとった。高校一年の一年間クラスがいっしょだったが、なるべくかかわらないようにした。それでも衝突は起った。その後の人生で出会った嫌なヤツは皆、高橋の似姿だった。
その高橋がいま、目のまえに立っていた。
やけにだぼついた黒いパーカーをはおって快速急行が来るのをならんでまっている。スーツケースをひいているのを見ると、一時的に帰省して、これから帰るところなのだろう。
高橋のうしろについてしばらくは気づかなかった。チラリと見えた横顔に、あのときの衝突がよみがえった。だまってその場を立去ることもできたが、それは負けを意味した。あのときは俺が負けたので、こんどは負けるわけにいかなかった。たとえそれがひとり相撲であろうとも。
電車が来た。
高橋はスーツケースを網棚にのせてつり革をにぎった。背中あわせに俺もつり革をにぎった。電車がうごきだした。
スマートフォンでXを見たが、背後に高橋の存在を感じてなにも頭に入ってこなかった。
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