群馬県の前橋文学館は2017年12月11日、萩原朔太郎の直筆書簡2通を発見したと発表した。書簡は正富汪洋宛てのもので、存在が確認されたのも今回が初となる。なお同館では2016年より、朔太郎の孫であり映像作家・演出家の萩原朔美が館長を務めている。

今回発見された2通は、今年1月に同館職員が東京の古書店で見つけたものだ。市の予算で購入し調査を進めていたが、筆跡や誤字の癖、原稿用紙などから朔太郎本人のもので間違いないと判断された。2通とも第一詩集『月に吠える』刊行翌年の1918年に差し出されたもので、内容は正富からの寄稿依頼に対しての返信となっている。

注目すべきは、その返信のなかで当時の詩壇への思いの丈が語られている点だろう。「今までの日本の詩檀といふものは、党派的な排他感情が強すぎる」「私のやりたいと思ふことは、日本の詩をして、ほんとの『正しい方角』へ導いてゆくことです」などと熱い言葉が綴られており、全体的に怒りと不満の滲み出た文面となっている。同館学芸員によると、朔太郎の手紙は事務的なものがほとんどで、詩壇への意見が明確に表明されたものはめずらしいという。

今回の2通は、12月16日より同館で展示がはじまった。また、来年2月からは、今年9月に発見された別の書簡(金児農夫雄宛て)も展示される予定だ。