2017年7月5日(水)、書評アーカイブWEBサイト「ALL REVIEWS」(https://allreviews.jp/)がオープンした。同サイトでは、「明治以降に活字メディアで発表されたあらゆる書評を網羅すること」を目標に掲げている。閲覧はすべて無料で、紹介されている本がサイト経由で売れた場合には書評家にアフィリエイト収入も分配されるという。

ALL REVIEWSを運営するのは、仏文学者・鹿島茂の個人事務所である株式会社ノエマだ。サイト起ち上げにあたって鹿島は、「耐久消費財であった本が、猛スピードで消費されるたんなる消費財と化してしまった」ことを出版危機の根源として挙げ、それを打開するには「書店で棚置きされたり、出版社の倉庫に眠っている旧刊行本が売れるようにする」ことが必要なのだとコメントを出している。そのための秘策が、この書評アーカイブサイトだというわけだ。

数多ある活字のなかでも、書評はとりわけ後世に残りにくい文章だといえる。よほど売れっ子でないかぎり書評だけで1冊の本にはなかなかならないし、のちに全集が編まれるような文豪もそうそういない。長尺のものであればまだしも、新聞の文芸欄に載るような短い書評に関してはほとんど顧みられることなく消えていくものが大半だろう。

プロによる書評よりも素人の感想文のほうが幅を利かせがちな昨今だからこそ、そうした書評を埋もれさせることなくアーカイブしていくことの意義は大きい。読者にとっても作家にとっても出版社にとっても、メリットばかりでデメリットの見当たらない試みといえるのではないか。

現在ラインナップされている書評家は30名ほどだが、今後どんどん拡大される予定だという。さらなるアーカイブの充実に期待したい。