〈8〉
どうやらそのまま眠ってしまったらしい。
時間は23時を過ぎる頃だった。
点けっぱなしだったテレビには見たことのない芸人が映っていて、何か真面目な顔で話していた。
少し寝汗をかいたようで、体がべたついた。
すぐにシャワーをあびるか迷った。
立ち上がるのが面倒だったので保留にした。
テレビはつまらなかった。芸人が芸をしないのでは仕方がない。
でもテレビを消すのは嫌だった。
部屋が静かになりすぎるからだ。
スマホをチェックした。相変わらずスパムしか来ていなかった。
未亡人は早く遺産を渡したくて仕方がないらしい。
しかも体が疼くので抱いて欲しいらしい。そんな人をぼくが満足させられるだろうか。
AVサイトの案内いくつも来ていた。
こいうのはたいてい何も見れないのに、いきなりIPと請求画面が出るやつだ。
これでもIT関連会社にいたのだから、さすがにそんな請求に根拠がないことは知っていた。
あとはショッピングサイトのニュースぐらいだ。
何か面白いメルマガにでも入っていればよかった。
ひまつぶしぐらいにはなっただろうに。
やはりシャワーを浴びて寝てしまおうか。
でも中途半端に眠ってしまったので、眠気は来そうにない。
寝室は散らかっているのであまり入りたくはない。
そういえば一人になってからは、いつもリビングで寝ていた。
だいたい終電で帰ってきてシャワーを浴びてすぐに寝てしまう。
テレビも電気もつけっぱなしだ。ずっと自由だった。
メールをくるくる見ていたら、しばらく行ってない風俗店のメルマガが来ていた。
ここはぼったくりではない店だ。3回ほど行った。
今日は平日で客が少ないらしい。
時計を見たら、まだ電車はありそうだった。
調べてみたらまだ終電には間があった。
しばらく迷ったが、とりあえず電話をしてみることにした。
会ったことのある店長が出た。
いつもありがとうございます、と言うのでたぶんぼくの電話番号が登録してあるのだろう。
今日は混んでいるか聞いたら、何時に来るかというので、30分か1時間ぐらいだと言ったら、大丈夫だと言った。
指名はあるかと聞かれたので、フリーでいいと言った。
名前をを聞かれて答えると、お待ちしていますと言って切れた。
ぼくはスマホと財布だけもって出かけた。
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