「次の一般質問に移ります。マーモット議員」
アシッド議長が議事を進行。次のデュエルが開始された。「闇の数学博士」の二つ名を持つ魔法使いマーモットは、数字を使った幻惑攻撃を得意とする。適当な数字を根拠なく主観的に濫用し、相手を混乱させて心をへし折るという力業でこれまで勝ち上がってきた。しかし彼の本領はそことは少し異なるところにある。攻撃よりも防御において、より高位の術式を用いることがあるのだ。マーモットは席を立ち、ゆっくりとした足取りで質問者席へ移動をする。質問者席への配置が済むと、スクリーンにはマーモット議員のSideBooks画面が表示され、使用する文書が手早く展開表示された。ファイルの動作が収まったところで、マーモットは議場に一礼する。傍観者がデュエリストに変貌する瞬間である。一般質問であるので先攻はマーモットだ。軽く咳ばらいをして、切り出す。
「マーモットです。市長にお聞きします。北の森の狩猟権について、地元猟師と冒険者での狩猟税を統一して、一律五百エンドルにするということですが、これはどういったお考えによるものなのか、お答えください」
マーモットはうつむいて資料を見たまま、言いたいことだけ言って着席した。対戦相手を見ないのは内心を探られないようにするためのデュエリストのテクニックの一つである。試合巧者としての円熟みを感じる。微妙に声のトーンとボリュームを下げているのも、自分の発言に意識を集めるための高度な話術である。聞き取りにくいという苦情もしにくい絶妙な声量なのは、さすがヴェテランというところだ。
「答弁を求めます。ユージ市長」
ユージのターン。ドロー。《沼》カード。《沼》か。ユージは沼を手札に収め、代わりに《豊饒な山》を場に置く。《豊饒な山》からは速攻効果のある《山の幸》コストが1発生する。即座にメインフェイズ(召喚フェイズ)に移行し、ユージは《山の幸》コスト1を使用して、《財務課長ガマグッチ》を召喚した。
「本件については鎌口財務課長から答弁します」
"異世界市長はデッキ構築の夢を見るんか"へのコメント 0件