おちこち

早朝学植物誌(第7話)

多宇加世

小説

2,854文字

掌編作品。合評会2020年1月・お題「普通」の「不」参加作品です。
わけあって本合評会のレビューをする余裕がないのと、毎度のことながら当日参加できないのが申し訳ないので、不参加作品です。

近くまで行かないとわからないことがある。遠くからでないと気づけないこともある。遠くから眺めたこと、近くで見つめたこと、どちらが記憶に深く刻まれる? 大きいものはカメラをぐーっと引こう。小さなものはこっそり覗き込もう。遠い。まだ遠い。近い。近すぎて。だからAの手が必要だ。まだなんだ。僕は、僕の腹の傷跡だけじゃだめだって知ってるだろうが。

光射す午後に、僕らは海沿いの道路へやってきて車を降りて歩き出す。ここは昔、街の若者が車でチキンレースをよくやっていたような長い長い直線道路だ。

「僕、あれからまた店に行ったんだ。だって、納得いかないだろ? 君があんなふうな扱い受けて」

「今更どうでもいいよ、俺は慣れてるし」

「でも、君の左手見た瞬間にあんな態度って。僕、食い下がったんだ。そしたら片手でも操作できるように改良できるケースがあって、そういう人向けのバイクも海外では普及してるって。だけど、やっぱり、その、丸々無いっていうのは……」

「ほらな、そんなこともう忘れようぜ」

「僕がバイクを運転して、君が後ろに乗るってのは」

「それじゃだめなんだって」

「そうだよね」

「お前が俺をじゃない。俺が、お前を、連れて行くんだ。バイクでやるってのは無しだよ。でもちょっとロマンチックだったろ?」

「うん。わかった。……ねえ、キスして。頭、撫でて」

「右手?  左手?」

「焦らさないでよ」

「わかってるよ、気持ちいいか?」

「うん」

「なんでこの無いほうの手がお前には感じるんだろう?」

「わかんない。でも気持ちいいんだ」

「……なあ、あれ」

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2020年1月17日公開

作品集『早朝学植物誌』第7話 (全10話)

早朝学植物誌

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© 2020 多宇加世

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