はじめてアンディの裸を見たとき、彼の胸には赤いあざがあった。一週間くらい前に上官から銃床で殴られたのだという。海兵隊が訓練所上がりの新兵を迎え入れる目的で行う、手荒い通過儀礼である。
あざは左肩から胸にかけて広がっていて、彼が腕を動かすたびに筋肉のついた厚い胸板の上でピクピクと動いた。釣り上げられた赤い魚が灼けたコンクリートの上で跳ね回っているようだと美沙は思った。
「新入りを一列に並べて手加減なしで殴るんだ。呼吸が止まりそうになるほど痛いし、鎖骨が折れるのも珍しくないけど、歯を食いしばってこらえなきゃいけない。俺の場合は出血までして、翌朝タンクトップの胸のあたりにピンクの染みができてたよ」と彼が説明するのを美沙は赤いあざを舌で愛撫しながら聞いた。乳首をなめると彼は緊張で硬くなり、言葉にならないうなり声を漏らした。ひょっとすると童貞なのかもしれない――彼の顔は頬骨が突き出てひげの剃り跡が濃く、一見大人びた印象を与える。それでもまぶたを閉じたときに見せる無防備な表情や笑顔の柔らかさから、まだ十代だろうと美沙は見当をつけた。
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