日常。(69)

日常。(第62話)

mina

小説

1,535文字

急に思い立って十年来の男友達にメールを送った
そのメールを後で読み返してみたら、自分でもビックリしちゃう程の暗い内容で、十年来の付き合いでも嫌われちゃうんじゃないかなってドキドキしながらメールの返信を待っていた
でも返ってきたメールの内容はとんちんかんで、何かちょっと安心した
けどその反面、私のこの気持ちは誰にも解ってもらえないんだなっていう孤独感もあった

『何故、食べたい分だけ思いっきりご飯を食べちゃいけないのだろうか?
それは太って醜くなっちゃうと仕事にならないから
何故歯を治したいと思うのか?
それは歯を治したら、笑顔が引きつらなくて済むから
写真を撮られるときに綺麗に写って欲しいから
それら全ては全部、日常を過ごすためのもの、お金のため生活のためである
…それら全てに何の意味があるんだろうかと、思う』
男友達からの返事は
『それら全てが自分のためになっていないということですか?』
だった
そうじゃなかった、自分のためになっていないとかじゃなかった
そういうことを誰かに伝えたいんじゃなかった
自分でも何が言いたいのか良く解らなかったけど…そういうことを伝えたいんじゃなかった
『趣味を持ったり、一日中温泉に浸かって何も考えないという日を作ったりするといいですよ(マジレス』
私のあまりにも暗いメールに男友達が心配してくれているのが解る
悪いことをしたかなって、ちょっと反省した
でもその男友達に自分の気持ちを吐露するのが一番手っ取り早かった
それは彼が私の職業を知っているからだ
『休めるなら仕事休んだら?』
いい提案だと思うけど…

         ・          

結婚して子供が出来てから、恐れていたことが起きた
妻がすっかり母親になってしまい、女を捨ててしまった
僕は妻に「綺麗だよ」って言わなくなった
妻のことは好きだけど、女として見れなくなっている自分もいた
結婚してもずっと奥さんのことを女として見ていたかったから、自分よりもかなり歳の離れた女性を選んで結婚したのに、やっぱりそうなってしまった事実がとても悲しかった
子供と一緒に寝てる彼女は可愛いと思うけど、ただそれだけで、僕にとって彼女は女じゃなかった
「 … 」
浮気をするつもりはなかった
でも、僕はまだ父親じゃなくて男だから…
「もしもしネットを見て…はい、予約したいんですけど大丈夫ですか?」

         ・          

結局、男友達のアドバイスを無視して
私はお店に出勤していた
「おはようございます」
「あ、新規のお客様でネット指名の方がいらっしゃるんで用意だけしておいて下さいね」
「あ…はい」
早速仕事だ、そんな気分じゃないのに…
「準備できましたか?」
「はい」
待ち合わせ場所に立っていたのはスーツをキチッと着こなしている、紳士という言葉が似合うおじさんだった
「はじめまして」
「はじめまして、よろしく」
風俗に来るようなヒトに見えなかった
「いやぁ綺麗なヒトで良かった」
「…そんなことないですよ」
「いや、綺麗ですよ!ネットの写真を見て君を選んだんだけど、顔を出してなかったからちょっと不安だったんです」
「合格ですか?」
「合格っていうか、とても綺麗です。あなたに逢えてよかった」
あまりにも綺麗だって褒められて、何だか解らないけど涙が出てきた
「どうしたんですか!?」
「なんでもないです…すみません」
泣いてる私をおじさんはマジマジと見て、更に
「泣き顔も綺麗ですね、あなたの全てが素敵過ぎる」
と言った
私はその言葉にカンジてしまった
何だか私が報われたような気がしたからかも知れない
                 end

2015年10月23日公開

作品集『日常。』第62話 (全70話)

© 2015 mina

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