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アレクサンドリア図書館 第一章

生贄物語(第7話)

尼子猩庵

この作品は遂に完成された究極のAIが書いたのだと第一章の「私」は言い張る。
   
※第58回北日本文学賞(2023)二次選考落選
※第五回文芸思潮新人賞(2024)三次予選落選

タグ: #メタフィクション #実験的 #純文学

小説

3,107文字

〆切が近づいているのにマッタク書けていなかった。

これはあかん。

あまりあかんので友人のYに相談した。

無類の読書好きな男であった。

そのYに紹介されたアプリなのだった。

なんでもAIが代わりに小説を書いてくれるとやら。

「そういうものがあるらしいということは、何となく聞いていたけれども」

するとYは呆れたように、

「君は我流が魅力だが、そのぶん無知なのが玉に瑕だ。聞いて驚け」

聞いて驚いたことにはこのアプリ、その名を《アレクサンドリア図書館》といって、文体やらジャンルやらを設定し、展開だの人物だのの漠然とした希望を入力し、決定を押すだけで、お望みとあらば原稿用紙一万枚の長編が、ほんの数秒で書かれるのだそうな。

壮大で矛盾のないプロット、魅力的で複雑なキャラクター、見事な伏線の回収、精緻を極めた時代考証、豊かな色彩・触感・奥行き、匂って来るような風景描写、哀愁、もののあはれ――しかし何と言ってもスピードとスタミナさ、疲れ知らずで大長編を楽々書くんだからな、内蔵された無数のAI読者と辛辣なAI批評家があらかじめ熟読し、前以てお墨付きをもらった一級品ばかりをね。

「しかしそんなものを使ったら、俺が書いたんじゃないってバレやしないか」

© 2025 尼子猩庵 ( 2025年5月9日公開

作品集『生贄物語』第7話 (全9話)

生贄物語

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