岩波書店が吉野源三郎の小説『君たちはどう生きるか』の増刷が決定したことを公式Twitterで発表した。7月14日に公開された、宮崎駿監督の同名映画の影響で品薄状態になっていた。

 吉野源三郎は1899年生まれ、編集者・児童文学者・評論家・翻訳家・反戦運動家・ジャーナリストで昭和を代表する知識人。雑誌『世界』初代編集長としても知られている。岩波少年文庫の創設にも尽力した。明治大学教授、岩波書店常務取締役、日本ジャーナリスト会議初代議長、沖縄資料センター世話人などの要職を歴任した。

 『君たちはどう生きるか』は彼の代表作で、1937年に発表された。主人公の少年「コペル君」の成長を描いた児童文学。1982年からは岩波文庫で出版されている。今回の増刷で累計180万部となり、岩波文庫歴代1位のプラトン『ソクラテスの弁明』を抜いて1位となった。

 宮崎監督にも影響を与えた1冊で、スタジオジブリ最新作のタイトルに用いられたことから再び注目が集まることになり、2017年には羽賀翔一の作画でマガジンハウスにより漫画化されている。

 映画のストーリー原作ではないが、映画の中で同小説と、ジョン・コナリー『失われたものたちの本』が大きな意味を持つことは事前に明かされていた。

 今回の映画が世界で再び評価されれば、海外での需要も高まるだろう。こうした流れから日本近代文学、しいては現代文学にも興味関心が高まることを願いたい。