想像の練習——歓待
腥田をにゆり
赫い夜空の昨夜にも燃えている。それは穏やかな湾岸から来た賊人達の棍棒とダガーの鋭い銀光をも無視できない騒乱へと狂ってしまった嵐が襲来して、火焔の始まりはどこの屋敷か知らなかった。少年は逃げる時に、村へ振り向かずあの先の視えない道の闇闇は小さな足音を呑み込み唯一の震えた声が耳に入る時では母親なのかそれとも他の村の者なのかわからないまま、騒がしい風の笛は静かな夜でも止まることなく吹き狂い、森林の無限に蒼然とした葉っぱたち、枝たちが踊っても、止まない風は妖魔が顕われるくらいの怖気を振るわせるリズムで変化してゆく中に、森の獣あるいは肉食の大鷲は闇闇の深所に棲み、視えずともこの心臓や恐怖心を統べていた。その時のてっぺんを見上げて、植物の甍に覆われて青い月光が僅かに巨大樹の割れ目から滲み出して、少年はその青い糸に導かれ、やがて古代民の墓所の泥濘を踏みしめて恐怖心はその時に忘れ去った星の夜とともに途絶えた。土と白い花の甘美な空気だけが鼻腔から肺葉へと沈んでゆくうちに、辛うじて背後には妖魔も賊人の追手が迫ってくる気配がしなくなってゆき、眼が幻視でもしたように月光の終点には死の霧が足を引っ張るような震えで沼と魔女の小屋は安静に佇んでいた。扉は老朽の鎖が掛かって魔法の誘惑でもあったかのように小さな手がやがて不気味なほどに響く扉の木目を叩いた。
「だれだい」
「あらぼくはどこからきたのかい」
「あめをまつあいだにおちゃでもしようか」
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