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夜になると……

腥田をにゆり

多分アランポーの影響…いや、プーかもしれません。※ 実在の人物・団体・事件などには一切関係ありません。

タグ: #ホラー #純文学

小説

3,847文字

夜になると……

腥田をにゆり

ねえねえ、安岡ってさ、あのお爺ちゃん。何処に行きました?確かに旅行するタイプではないですね。そういえば安岡さんの歯は二本欠けてるんですね。何本目と何本目か憶えてます?つい最近見なくなったから急に気になりましたよ。それと、花火大会の開催は決まったって!良かったです本当に。確かに夜になると怖いですし、ほら、夏だから怖い話もするじゃん?アタシって怖いのが苦手じゃないですか。中学の時はモエちゃんとハルト、シオリちゃん、あと他のメンバーと一緒に夜のダムに潜入して、肝試ししたじゃん?憶えてます?へんな音がして、モエちゃんが螺旋階段の所で泣きましたよ。たぬきでした。たぬきは夜になると眼が野良猫みたいにとても明るくなりますね。あれって反射?ちなみにダムの近くに野良猫見たことないけど、たぬきは本当によくいましたよ。ハルトは、自分の爺ちゃんは昔たぬきを捕まえてたぬき汁にしたと言ったけど、どう考えても嘘でしょうね。お爺ちゃんの嘘なのかハルトの嘘なのか知らないけど、ハルトは嘘ばかりつくから、そういう家族かもしれません。——毎回思うのが、最近川の近くに本当に観光客が多いですね。そもそも観光客なのかな?川ですっぽんぽんになる外国人さん本当に多かったんです。しかし、みんなああいう感じで日光浴をしているわりに、毎回川の方を眺めたら相変わらず白かったんですよ。もしかしたら、日本の太陽が優しすぎたかもしれません。けどみんな楽しそうでした、たまには犬も連れてきました。ダルメシアンも川で見ました、洋画にしか出てこないから実物見た時は泣きそうになって、しかもフリスビーをキャッチするのもとても上手だったし、賢い犬だなと思いました。川の外国人たちは基本的にマナーが良かったから別にいいかと思ったけど、ただ、男の胸毛が凄すぎたからちょっと恥ずかしいかな……。あと下に関しては履いてないかもしれないけどアタシは上半身だけ見るようにしたので、どうなってるかわかりません。安岡さんの犬も最近見なくなって、少し淋しいです。あの家はなぜ急に飼い主も犬も消えちゃったんでしょうね?花火大会が中止になりかけたのと同じ理由なのかな?しかし、また無事に開催することになりましたし、父さんがホイッスルくれたけど、本当に大袈裟ですね。

ねえねえ、去年のドライブ本当に楽しかったです。静岡の魚は美味しいですね、びっくりしました。静岡だけではなく、また東京以外の色んなところに行ってみたいです!あら、アタシは東京人ですよ、プライドがあります。確かにたぬきやらハクビシンやらが出てくる山ではありますが、間違いなく東京ですから。町田よりも新宿に近いと思いますよ。

お祭りはとても好きです。縁日の屋台はいつもワクワクします。子供の頃は夏の蚊が多くて、母さんは行かせてくれなかったんです。箱入り娘でした。母さんは毎回父さんに引越しのこと話すけど、父さんが「大自然がいいと言ったのは誰だ?」と言い返して、母さんもガーッとなるのは本当に毎回同じパターンで嫌でした。小学校は一度だけお祭りに行ったかな?五年生の頃かな?いや、四年生?当時の花火はずっと憶えていました!確かに当時、父さんが新しい事業を始める段階だったから、夏休みはニート父になって、ずっと一緒に居ました。しかしよく数千万円の融資通ったのが本当に凄いですね。それでも、実家は山にあります笑。そうそう、父は今も同じ会社というか、主に飲食店?笑。まぜそばとか粉物のチェーンをあっちこっちに展開したけど、どちらもあまり興味ないかな……。オシャレなイタリアンかマーラータンだったら良かったんですけどね。——ちなみに、お祭りの時何が一番好きですか?アタシだったら綿飴一択です。綿飴はこの歳になると買う勇気なくなりますね。ちびっ子の前で食べるのなんか申し訳なく感じませんか?ええ、本当ですか?もしそんなにへんじゃなかったら、今回の花火大会アタシ買っちゃおうかな?それで、あなたも共犯ですよ笑笑。

ねえねえ、どうせならついでに金魚、掬ってみませんか?コツ知っていますか?鼻上げている個体は酸欠していて、これを狙えばいいと、昔付き合っていた人が教えてくれました。多分彼の話は初めてじゃないと思いますけど、違います?あまりいい思い出ではないので、この話はここまでにしておきましょう。——しかし彼のこと本当にムカつきます。彼は飲みかけのラムネを池に注ぎました。それでアタシはちょっとピアス開ける男のことが無理になりました。そうですよ、もし今度ピアス開けたらそれは縁が尽きる日だと思いなさい笑笑。

本当に言葉がありませんでした。安岡さんだったらどうしましょう?あのズボンは間違いなく安岡さんでした。今となっては歯どころか——全部無くなりました。マスコミの人にも聞かれて、とっさには答えられませんでした。しかしこの山はいつも通り安全ですよ、心配しなくて大丈夫です。安岡さんは運が悪かったんですね、父さんに聞いたら少なくとも五十年以上もこんなことは起きませんでした。元々東北にしかない話だと思いましたが、周りに起きるとなんか不思議ですね。上人様も久々焦って、神主と会話するのを見ました。安岡さんを引き取る親族はいないらしいです、とても淋しいお爺ちゃんでした。夏祭りは神主によると中止はできないらしいです。間違いなく屋台テントを申し込んだ人に怒られます。最近、この辺本当に賑やかになりましたね。本当に地元規模の花火大会なのに、外から来る人があまりに多すぎたので、コンビニ一つしかないけど大丈夫かな?あと、駅のところにある喫茶店、銭湯の店主は毎回トイレの件で困っています。そうそう、貸さないと皆、雑草で立ちションするんですよ、野蛮ですね。

ねえねえ、やはりやめましょうか?別に地元に拘りません。正直にちょっとビビりました。花火のこともう頭の中から消えました。——影だけです。丁度、いつも通る橋に一本が落ちていました。恐らく食べかけです。本当に気持ち悪かった。実際見たら、偽物とすら思えたので、撮影した後に少し触りました。思いのほか柔らかかったですが、どんな人なのか想像してみました。一本だけ残すのは何故なのか?寿司屋の大将だったら酢の匂いがキツかったでしょう……しかし女性のようです。すぐ交番に連絡したら、保冷バッグを持ってきました。お巡りさんも見慣れていないようです。お巡りさんの手がずっと震えていました。アタシはそのあと暫く、今回の提案について長考しました。けど、久々に出会うならやっぱり地元がいいですか?鎌倉はどうですか?と言っても家はここにあるからどこにも行けません。同棲は考えていますか?もし同棲するなら一緒に不動産屋に行きたいです、けど、やはり今はそんな気分じゃありません。本当に陰鬱です。暫くは人を見る時、顔だけ見ることにしました。そうしないと思い出します。いつになったら正常に戻るかわかりません、けど会いたいので、そこは心配しないでください。

あとちょっとで始まりますね。いよいよですね。アタシは少し元気になりました。今は夜の散歩を辞めました、これをきっかけに家でストレッチし始めました。ストレッチはいいですよ、汗が出ると色々と忘れる気がします。

そういえばヒュパティアって知ってますか?古代ギリシャの人です。怖い話は無理だけど、歴史トリビアをよく見てます。不覚ですが、メンタルはヒュパティアにやられました。ここまで避けてきたのに、この人の話がとてもグロいです。要約しますと、彼女は無惨に死にました。それよりも、貝です。頭が良かったから、魔女だと思われて、貝に殺されました。貝ですよ?ゾッとしました。そのまま裸で貝にじっくり削られて死にます。そうそう、鰹節と同じです。残酷ですね。もし食べられたら、牙は貝よりずっと分厚くて、一撃で心臓を貫かれたほうが良さそう、と想像しました。もちろん冗談ですよ、アタシが元気になったのを証明したいから。もし他に代案なければ地元でもいいですよ。心配させてしまってごめんなさいね。

どうですか?似合いますか?昔から水色に似合うと言われますよ。その紺色、とてもかっこいいです。お互い、着物がとても似合いますね。

案外平和でした。今回は駅周り整理されなかったので、やはりそんなもんですね。実は今も怖いので、手を繋いでくれますか?あ、やっぱりいいです。ごめんなさい、本当にそうじゃないです。柔らかさに怯えています。アタシは神経質すぎました?アタシも本当はとても楽しみにしてました。やはり断るべきだったんですね。

ごめんなさい。せっかく来てくれたのに、どうにもなりませんでした。アタシはこのまま帰ります。花火本当に遅いです、イカ焼きのタレが袖口についたし、最悪です。

もう付いてこないでください。本当のことを言ってます。あなたはもう嫌いです。どうしてもついてくるならアタシは走りますよ?いいですよね?

⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀*

はっはっはっ。

足早いですね、参りました。久々に走って本当に疲れました。この辺は街灯がなくて暗いですね。

ねえねえ、なんで返事してくれないんですか?アタシはもうあなたを許しましたよ。そろそろ一緒に屋台のほうへ戻りましょう。

⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀⠀*

あ、もう遅かったかもしれません。

花火が。

 

たまやー!

 

——あれ? 眼の反射……。貝みたいな牙なんだ。

© 2026 腥田をにゆり ( 2026年5月28日公開

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