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未届の夜会巻き

無花果回

届出の不備は赤で囲むことになっている──では、届け出られない感情は、何色で囲めばいいのか。

小説

14,248文字

 

届出の不備は赤で囲むことになっている。

フェルトペンの赤。役所の備品の、太字と細字が両端についているやつの、細字側。婚姻届の「届出人署名」欄に旧姓が混在しているとか、死亡届の「死亡したとき」に午前と午後の区別がないとか、そういう不備を見つけたら赤で囲んで、届出人に連絡する。一日に平均して四件。多い日は九件。正円でなくていい。「ここ」と示せればいい。

二月七日、金曜。受理番号1823から1849まで。婚姻届三件、離婚届一件、出生届五件、死亡届四件、養子縁組一件、その他。死亡届の四件目、受理番号1847に不備があった。「死亡したとき」の欄。

令和七年二月五日 午後十一時五十八分。

分単位まで書いてある届は珍しくない。病院で亡くなれば医師の死亡診断書に時刻が出るから、届出人はそれを写す。不備はそこではなかった。「届出人」の欄。故人との続柄に「妻」と書いてあるが、署名の姓が故人と異なる。

電話をかけた。五コールで出た女性の声は、低くて、乾いていた。

「戸籍課の水谷です。死亡届の記載についてお伺いしたいのですが」

続柄と署名の姓の不一致を説明した。二十秒ほど、受話器の向こうが静かだった。テレビの音が遠くに聞こえた。ワイドショーの笑い声。

「旧姓、です。届出を書いたとき、自分の名前がわからなくなって」

私は何も返さなかった。返す言葉が業務の中になかった。

「訂正印をお持ちになって、窓口までお越しいただけますか」

受話器を戻す。プラスチックが台座に当たる音。左手首の内側が、痒い。低温やけどの痕は冬になると主張する。中学二年の冬、祖母の家に泊まった夜、祖母が湯たんぽを持ってきて、私はそれを抱いたまま眠った。朝、左手首の皮膚が白く変色していた。祖母は泣きそうな顔をした。私は「痛くない」と言った。痕だけが残った。

五時四十分。窓口のアクリル板を拭いて、書類をファイルに戻して、デスクの引き出しを施錠する。赤のフェルトペンをペン立てに戻す。キャップを嵌める。小さく鳴る。

 

スーパーは役所から祖母の家までの導線上にある。丸吉ストア。火曜と金曜がポイント二倍。

籠に入れるもの。木綿豆腐一丁、小松菜一束、鶏ひき肉百五十グラム、卵六個パック、食パン六枚切り。とろみ調整食品、嚥下補助ゼリー、イチゴ味。祖母は最近、固いものが呑み込みにくい。とろみ剤を味噌汁に入れると、液体がゆっくりになる。ゆっくりになった液体を祖母は飲む。

「袋、要りますか」
「いえ」

エコバッグを広げる。卵を一番上にする。二月の午後六時はもう暗い。街灯がオレンジ色で、自分の影が先に角を曲がる。

 

祖母の家は私が生まれる前からここにある。木造二階建て、築五十三年。二階にはもう誰も上がらない。階段の三段目が軋むから、夜中に祖母が上がろうとするとわかる。去年、階段の入口にベビーゲートを取り付けた。乳幼児用の柵。

玄関の鍵を開ける。

「ただいま」

返事がある日とない日がある。今日はある。

「おかえり」

台所から声がする。椅子に座っている。テーブルの上にみかんが三つ。一つは皮が半分剥かれたまま放置されている。白い筋を丁寧に取ろうとして、途中で──やめたのか、忘れたのか。

「ごはん作るね」
「うん」

祖母は私を見ている。今は、わかっている。この目は孫を見る目。午後はまだ大丈夫なことが多い。日が落ちると変わる。夕暮れ症候群。太陽と一緒に、祖母の現在地も沈む。

小松菜を洗う。根元に土。爪の間に入る。流水。包丁で三センチ幅。鶏ひき肉に塩と片栗粉。豆腐は手で崩す。味噌汁。とろみ剤を小さじ二杯。かき混ぜる。

「美代ちゃんは料理上手だねえ」

美代は母の名前。

「……うん」

否定しない。訂正しても、三十秒で戻る。今はもう投げない。

向かい合って食べる。祖母が味噌汁を啜る。とろみのついた味噌汁は音が鈍い。普通の味噌汁は「ずず」と鳴る。とろみ入りは「ぬ」に近い。

「今日はお仕事どうだった」
「普通だったよ」
「そう。忙しかった?」
「まあまあ」

祖母が私を美代だと思っているなら、この問いは三十年前の母に向けられている。母はここから自転車で二十分の信用金庫で働いていた。今は父と札幌にいる。祖母の介護を私が引き受けたのは、勤務先が近かったから。それだけが理由ではないが、それが一番説明しやすい理由だったから、みんなそれで納得した。

食器を洗う。テレビをつける。いつものチャンネル。

服薬。白い錠剤を一つ、五ミリグラム。朝食後のはずだが、朝は飲ませ損ねることが多い。ケアマネージャーには「朝飲ませてます」と言っている。嘘。

二十一時。入浴介助。湯温を四十度に設定して、祖母の服を脱がせる。肩甲骨の下に大きなほくろがある。子どもの頃、そのほくろを押すと祖母がくすぐったがった。今は押さない。背中を流す。

入浴後、ドライヤー。祖母の髪は白くて細くて、風で散る。弱にしても毛先が舞う。左手で髪を押さえる。指の間を白い髪がすり抜ける。

黙って乾かす。黙っている時間が、たぶん一番正確な。

──いや、なんでもない。

二十二時。布団。

「おやすみ」
「おやすみなさい」

消灯。

ここからが、夜。

 

祖母の家の間取り。六畳二間と四畳半の台所と三畳の板の間。祖母の寝室は奥の和室。私は手前に布団を敷くが、眠らない。眠れないのではなく、眠らない。午前零時まで。

茶の間で、仕事の残像を片づける。窓口で受け付けた届出の記憶が夜になると戻ってくる。記載された名前、筆圧、インクの色。届出用紙のフォーマットは全国共通だが、書く人間は一人ひとり違う。文字の癖、記入欄からのはみ出し方、訂正印を押す指の力。

今日の受理番号1847。あの声。「自分の名前がわからなくなって」。

結婚して姓が変わって、夫が死んで、届出を書くとき、どの名前が自分のものかわからなくなった。戸籍上の名前は一つに決まるのに、人間の中にある名前は一つではない。旧姓の自分。婚姻後の自分。子どもに呼ばれる名前。夫に呼ばれていた名前。呼ぶ人がいなくなった名前は、どこに届け出れば受理されるのか。

窓口では考えない。夜、考える。

二十三時。白湯を飲む。マグカップは祖母が昔、母に買ったもの。持ち手にヒビが入っている。使えるが、いつ割れてもおかしくない。替えたら祖母が気づくかもしれない。気づかないかもしれない。気づかないことの方がつらいから、替えない。

左手首を掻く。掻いてから気づく。冬はいつもこう。

二十三時三十分。空気が変わる。

比喩ではない。夜の介護をしている人間にはわかる。温度でも湿度でもない。気配。隣の部屋で何かが組み替わる音のない音。記憶の地層がずれる。断層が、かちりと。

襖の向こうで、布団の衣擦れ。

起きた。

 

祖母が起きて最初にすることは、その夜によって違う。

トイレに行こうとする夜。台所で水を飲む夜。「お父さん」と死んだ夫を呼ぶ夜。玄関で靴を探す夜。二階に上がろうとする夜。私の布団に来て「美代ちゃん、学校は」と言う夜。

パターンを記録している。手帳に、日付と行動を。記録しないと、夜が全部つながって、一つの長い夜になる。日付で切る。切って、番号をふる。そうしないと私の時間も溶ける。

今夜。

襖を開けると、祖母が押入れの前に座っていた。上段の襖が開いている。中から何かを出している。

鞄だった。

茶色い革の鞄。小さい。ボストンバッグと呼ぶには華奢で、ハンドバッグと呼ぶには深い。子どものころ押入れの奥で見つけて「これなに」と聞いた記憶がある。祖母が何と答えたか。

祖母は鞄の口を開けて、中を覗いている。空っぽの鞄の内側を、指で触っている。内張りの布。エンジ色。

「おばあちゃん」

振り向いた顔を、私は知らなかった。

目が違った。焦点が合っている。合いすぎている。見当識障害の夜、祖母の目はたいてい膜がかかったようにここではないどこかを見ている。今夜は違う。はっきりと、ここにいた。ここにいるのに、私を知らない目をしていた。

「今夜、出るの」

声にためらいがなかった。

「出る?」

「うん。荷物をまとめなくちゃ」

箪笥の二段目。白いコットンの肌着を一枚取り出して、たたみ直して、鞄に入れた。角を合わせて、半分にして、もう半分。手が迷わない。昼間の祖母はタオルをたたむ途中で手が止まる。今の手は忘れていない。

「どこに行くの」

聞きながら、廊下の温度を計算していた。外気温はたぶん三度以下。止めなければ。止めるための言葉を探しながら、同時に、祖母の手の動きに──。

「駅。終電があるうちに」

鞄にカーディガンを重ねている。グレー。毛玉が袖口にあるはずだが、暗くて見えない。部屋の照明は点けていない。廊下の明かりだけ。

「誰かと、行くの」

「あの人が待ってる」

「あの人って」

祖母が初めて私を見た。正確には、私を通過して、その向こう側を見た。微かに笑った。

「言ったら怒るでしょう」

畳に座った。祖母の隣に。

「怒らないよ」

「お父さんには内緒ね」

お父さん。祖母の父。私にとっての曽祖父。顔も名前も知らない。戸籍で見た。続柄、生年月日、死亡日。それだけの人。

「内緒にするよ」

祖母がうなずいた。その安心の仕方が若かった。頬が弛むのではなく、目が弛む。肩が二センチほど下がる。窓口で、二十歳の婚姻届を受理するときに見る、あの顔に。

「あの人とね、約束したの」

「約束」

「東京に行くの。二人で」

祖母は大田区の生まれで、この町に嫁いで来た。今、祖母が語っているのは、それよりも前の話だった。

「あの人は面白い人でね。手紙をくれるの。毎週」

祖母の声が変わっていた。輪郭のはっきりした声。抑揚が多い。同じ声帯の、違う奏者。

「手紙に何を書いてくるの」

聞いていいのかわからなかった。祖母の記憶に入り込んでいいのか。でも聞かなければ、この時間はただの見当識障害のエピソードとして手帳に記録されるだけだった。日付、時刻、行動。

「映画のこと。あとは、食べたものとか。どうでもいいことばっかり。でも、手紙の最後にいつも」

鞄の留め金に指をかけた。金属の留め金。古い型の、パチンと音がするやつ。

「最後にいつも、なに」

「会いたい、って」

留め金を開けて閉めた。パチン。暗い部屋に響いて、消えた。

窓口を思い出していた。婚姻届の「届出人署名」欄。二人の名前が並ぶ欄。あの欄に署名するとき、ペンを持つ手が震える人がいる。あの震えの中には、「ここから先は戻れない」という振動も含まれている。

祖母は今、その手前にいる。留め金をパチンと鳴らしている。まだ出ていない。出る前の夜に、何度でも。

「髪をやって」

いつもの言葉。でもいつもとは違う声だった。いつもの「髪をやって」は慣習として口から出る。触れてほしいだけだと思っていた。

今夜の「髪をやって」は、違った。

「きれいにしていかなくちゃ」

 

柘植の櫛。歯が細かい。いつからあるのか知らない。櫛の背に文字が彫ってある。磨り減って読めない。ヘアピン。黒いアメリカピンが十本ほど、錆びたドロップ缶に入っている。中身はもうない。

祖母の後ろに座る。

髪を梳かす。白い髪は乾いていて、櫛を通すと微かに音がする。紙を裂くような音の、遠い親戚。一梳き、二梳き。祖母の肩は小さい。鎖骨の端がパジャマの襟元から覗いている。

夜会巻き。去年の八月、祖母が初めて「髪をやって」と言った夜、私はポニーテールしか結えなかった。祖母は困惑していた。自分が何をしてほしかったのかを、自分でも忘れかけている顔だった。翌日、「夜会巻き やり方 初心者」。三十二万回再生。

髪を後ろでまとめる。束をねじる。上に持ち上げる。頭の後ろに沿わせて、毛先を巻き込む。ピンで留める。一本目。二本目。

足りない。若い頃の写真では黒くて多くて、巻き上げると後頭部に丸い膨らみが出来ている。あの髪は、もうない。足りない髪を、足りないまま巻く。三本目。

ピンの先が頭皮に触れる。祖母が小さく動く。金属の冷たさが指から伝わる。そして頭皮の温度。暖房のない部屋で、祖母の頭皮だけが温かい。

鏡がない。洗面台の脇に手鏡がある。縁が銀色の楕円。裏面に鶴が彫ってある。

祖母の顔の高さに合わせて、両手で持つ。鏡の中に祖母の顔がある。

祖母が目を細めた。

何を見ているのか。六十年前の自分をこの鏡の中に見つけたのか。

鏡を持つ私の手も映り込んでいた。左手首の内側。やけどの痕。祖母はそれを見ていない。私の手は、祖母の顔を囲んでいるだけ。透明な額縁。

「きれいね」

その言葉が誰に向けられたのか、わからなかった。

わからないまま、私は鏡を持ち続けた。腕がだるくなる高さだった。下ろさなかった。

 

午前零時十四分。祖母は鞄を持って立ち上がった。手すりも壁もなしに、一度で。鞄を右手に持ち、左手でパジャマの裾を──スカートのつもりで──直した。

玄関に向かう。

私はコートを取った。靴を出した。介護用のスリッポン。軽くて、前開きで。つまり、祖母が自分で選んだものではない。左右を揃えた。祖母が足を入れた。コートを着せた。ファスナーを上げた。首元まで。祖母の顎に指が触れた。

「行こう」

私が言った。

二月の空気が入ってきた。冷たいというより、痛い。肺に触る。

一歩、二歩、三歩。

祖母のスリッポンがコンクリートを擦る音。私のスリッパの音。二つの足音が、揃わないまま並んでいた。

四歩目。祖母が立ち止まった。

振り返った。家を見た。暗い二階の窓。一階の廊下の明かりが玄関のガラス越しに漏れている。

それから、私を見た。

どこの時間にも属さない目。さっきまでの焦点が、ゆるやかに溶けて、でも消えてはいなくて、何かと何かのあいだに。

祖母が笑った。

「寒いね」

駆け落ちも、「あの人」も、約束も、なかった。ただ、二月の夜に外に出たら寒かった。八十七年の時間がぜんぶ落ちて、「寒い」だけが残った。

「寒いね」

二人で家に戻った。靴を脱いで、廊下を歩いて、布団に入って。鞄は玄関に置いたまま。私が拾って、押入れに戻した。留め金をパチンと閉めた。

祖母はもう眠っていた。

 

茶の間。手帳。

二月七日(金)23:30 起床。押入れから鞄。衣類を詰める。「今夜、出る」。駆け落ちの記憶か。夜会巻きを要求。0:14 玄関へ。外出(付き添い)。門扉手前で自発的に停止、帰宅。0:22 再入眠。

記録。時刻と行動。

閉じない。

祖母が「会いたい」と言った声。私は祖父を知らない。写真では知っている。仏壇の。白髪で、無口そうで、顔の左側にほくろ。祖父は私が三歳のときに死んだ。

祖母が語った「あの人」は、仏壇の写真の男とは別の人間だった。映画が好きで、手紙を書いて、「会いたい」と書く人。祖母の中にだけいる人。記憶が崩れていく中で、最後まで残っている人。

柘植の櫛を見た。テーブルの上に置いたまま。背の文字。磨り減って読めない。何と彫ってあったのか。名前、かもしれない。

触った。指で、彫りの凹凸をなぞった。読めない。

祖母がいなくなったら、これらの物は私のもとに残る。物だけが。染み込んだ時間ごと。

 

朝。六時。窓が白い。

祖母の部屋を覗く。夜会巻きは崩れて、ピンが枕の横に散らばっている。黒いピンが白い枕カバーの上に、三本。四本目は祖母の髪にまだ刺さっている。

ピンを外す。祖母は起きない。髪を手でほどく。

食パンを焼く。卵を溶く。味噌汁の残り。とろみ剤。

祖母が起きてくる。

「おはよう」

「おはよう」

「今日はお休み?」

「土曜だからね」

「じゃあゆっくりしなさい」

食パン。卵焼き。味噌汁。「ぬ」という音。

鞄のことは覚えていない。「あの人」のことも。覚えていないのか、覚えているが言わないのか。

「おいしい?」
「おいしいよ」

朝の祖母の笑い方。顔全体で笑う。夜は目だけで笑う。

 

午前十時。ヘルパーの田中さん。

「水谷さん、昨夜はどうでした?」

「夜中に起きて、少し外に出ようとしました」

「止められた?」

「少しだけ出て、すぐ戻りました」

「寒かったでしょう」

「寒かったです」

田中さんが入浴介助をしている間、私は二階に上がった。ベビーゲートを越えて、軋む三段目を踏んで。

祖父の書斎だった四畳半。本棚と机。埃が積もっている。窓から入る光の中で埃が浮いている。

机の引き出しを開けた。

手紙があった。

束になって、紐で括られていた。封筒は白いものと水色のもの。消印。昭和三十一年。三十二年。三十三年。

宛名は「内海冬美様」。差出人の名前は──祖父の名前ではなかった。

手紙に触れて、やめた。開ける権利が私にあるのか。宛名は祖母。差出人は知らない人。祖母はもう、この手紙のことを。

引き出しを閉めた。埃の中に、私の指の跡。

 

午後。祖母と二人。みかん。

「おばあちゃん」

「ん?」

「昔の話、聞いていい?」

「昔って?」

「ここに来る前。大田区にいた頃の」

祖母が手を止めた。みかんの房を持ったまま。

「懐かしいねえ」

「覚えてる?」

「あんまり覚えてないよ、もう」

覚えていない。昼間の祖母は覚えていない。夜の祖母だけが覚えている。太陽が出ているときに消える星みたいに。みたいに、って──いや、そのまんまか。

「みかんおいしい?」

「おいしいよ。食べる?」

祖母が一房、差し出す。酸っぱい。二月のみかんは酸味が強い。祖母は平気な顔で食べている。

 

夜。同じ手順。

午前零時を待つという行為に名前がほしい。看取りではない。介護でもない。介護は日中の手順の名前で、夜のこれは。

待っている。祖母が起きて、私を知らない目で見て、私の知らない時間に連れて行く瞬間を。あるいは祖母が起きないまま朝が来て、「おはよう」の中に私がいる朝を。

どちらを待っているのか。

午前零時。

静か。

零時三十分。寝息だけ。規則的で、深い。今夜は起きない。

そう確認したとき、左手首のあたりが、少し冷えた。安堵なのか。名前をつけるのをやめる。名前をつけると受理しなければならない。

 

布団に入った。天井を見ていた。暗い天井の木目。子どもの頃に泊まったとき、木目の中に顔を探す遊びをした。

祖母が昨夜語った「あの人」。手紙は二階の引き出しにある。祖父の書斎の引き出しに。

祖父の書斎に、祖父ではない男の手紙がある。

祖母がここに嫁いできたとき、手紙も一緒に来た。祖父はそれを知っていたのか。

戸籍には書かれない。婚姻届には「届出人」と「届出人」の署名しかない。二人の間にある感情──あるいは、二人の前にあった別の感情──は、どの欄にも。

 

日曜。朝から雪。

窓の外の塀の上に、うっすら白い線。

「積もるかな」
「どうだろう」
「積もるといいねえ」

祖母は窓の前に立って、ずっと外を見ていた。

 

月曜。窓口。

最初の届出人は、出生届を持った男性だった。三十代。スーツ。ネクタイが曲がっている。

「お子さまのお名前の読み仮名をお願いします」

「『ひなた』です」

「生まれたときのお時間は」

「午前二時十三分です」

午前二時十三分。始まりと終わりに時刻がつく。その間のすべての時間には、つかない。

受理。

次の届出人。婚姻届。二人。女性の方が書類を持っている。男性は手ぶらで、少し後ろに立って、窓口の天井を見上げている。

二人の名前が並んでいる。字の大きさが違う。女性の字は小さくてきっちりしている。男性の字は大きくて右に傾いている。

受理。

 

昼休み。給湯室で弁当。祖母の朝食を作るついでに詰めたもの。卵焼きは甘い。砂糖を多めに入れるのは祖母の好みで、私の好みではないが、一緒に作ると祖母の味になる。

吉川さんがコンビニのおにぎりを食べながら。

「水谷さん、三時に来る予定の人、死亡届の訂正。先週の」

受理番号1847。

「はい」

午後三時。五十代の女性。黒いコート。訂正印。赤い丸を示す。

「こちらの続柄の欄ですが」

「はい。旧姓で書いてしまって」

印鑑を取り出す。朱肉につけて、訂正箇所に押す。印影は「長谷川」。死亡届の署名は「水谷」。

水谷。

女性が印を押す指を見た。薬指に指輪の跡。光の加減でしか見えない窪み。見えてしまった。

「以上で結構です」

「あの」

女性が立ち上がりかけて、止まった。

「届けたいことが、あとから出てくることって、あるじゃないですか」

業務の中に返す言葉がなかった。

「──すみません、変なこと言って」

「いえ」

黒いコートの背中。自動ドア。

届出の用紙にない欄に書きたいこと。赤で囲む不備ではなく、そもそも欄が存在しない記載事項。

 

帰路。丸吉ストア。嚥下補助ゼリー、いちご味。メロン味は「変な味がする」と言って残す。先週、品切れで、ぶどう味を買って帰ったら、祖母は一口食べて、テーブルに置いて、忘れた。忘れたことがいいことなのか。

祖母の家。

「ただいま」

返事がない日。

台所。祖母が椅子に座っている。テーブルの上に柘植の櫛。祖母が櫛の背を指でなぞっている。

「おばあちゃん」

夕方の顔。昼と夜のあいだ。

「これ、なんて書いてあるか知ってる?」

首を振った。

「お父さんがくれたの」

「嫁入りのとき、これだけ持っていけって」

祖母は櫛の背を撫でていた。読めなくても、指が覚えている。

「名前が彫ってあるのよ。私の」

内海冬美。

「大事にしなさいって。自分の名前をわすれないようにって」

「あなた、名前は?」

 

夕方。見当識がずれ始める時間。

「水谷遥です」

窓口で言うように言った。

「水谷さん」

他人に向ける丁寧さだった。

「あなたも水谷なの」

「うん」

「奇遇ねえ」

あなたの孫だからと。言っても伝わらない時間帯。言っても傷つけるだけの。

「ごはん作るね」

「ありがとう、水谷さん」

その呼び方が窓口の向こう側から聞こえてくる声に似ていた。届出人が私を呼ぶ声。祖母が私を、窓口の向こう側の声で呼んでいる。

 

夜。入浴。ドライヤー。

今夜。

午前零時。

音がした。引き出し。留め金。パチン。

襖を開けると、祖母が鞄を持って立っていた。すでに立っていた。前回より迷いがなかった。

「今夜ね」

「うん」

「遅れちゃうから」

コートを取った。靴を出した。左右を揃えた。今夜は止めなかった。

外に出た。前回より風がある。祖母の白い髪が風に吹かれる。結んでいない髪が散る。

五歩。門扉。今夜は門扉を開けた。道路に出た。

街灯の下を歩いた。祖母のスリッポンの足音。スーパーの前を通る。シャッター。

「ここ、知ってる?」

「知らない」

「そう」

角を曲がった。もう少し歩いた。自動販売機の白い光。祖母は立ち止まらなかった。前回とは違う。前回はここで止まるはずで。はずで、って何だ。記録のパターンで予測している。手帳の。人を。

電柱の根元のコンクリートのブロックに座った。冷たかった。尻から背骨を通って首まで。祖母は鞄を膝の上に置いて、両手を留め金の上に重ねていた。

「あの人、待ってるかな」

「待ってるよ」

「約束したのに、いつも遅れちゃうの」

「大丈夫だよ」

祖母が鞄の留め金を開けた。中を見た。空っぽの中を。それから留め金を閉めた。開けて、閉めた。もう一度。パチン。パチン。

魔法が解けるのを待っているのだと思った。ガラスの靴が消えてスリッポンに戻る。コートがカーディガンに戻る。二十歳が八十七歳に戻る。戻れば楽になれる。でも戻るためには零時を過ぎなければならなくて、零時を過ぎるためにはここにいなければならなくて、ここにいるためには出なければならなかった。毎晩、出発しなければ帰れない。

祖母が私を見た。

見た。

私を。

今夜の目は前回と違った。どこの時間にも属さない目ではなく、ここにいる目。ここにいて、私を見ている目。祖母の目に私の顔が映っている。街灯で片側だけ照らされた私の顔が。

「あなたも、行きたいところがあるんでしょう」

声が低かった。低くて、はっきりしていた。二十歳の声でも八十七歳の声でもなかった。どちらでもない声。年齢のない声。

「え」

「わかるよ。ここじゃないどこかに行きたい顔をしてる」

私は何も言えなかった。返す言葉が業務の中にも、夜の中にもなかった。

行きたいところ。あるのか。この二年間、役所と丸吉ストアと祖母の家を三角形に歩いていた。三角形の外に出たことがない。出たいと思ったことが。

ある。

ある。あるに決まっている。二十八歳で、三角形の内側にいて、午前零時を待つ人生を、選んだのは私で、でも選んだという記憶がない。気がついたらここにいた。気がついたら毎晩ここにいた。勤務先が近かったから。それだけが理由ではないが。ではないが。ないが、ないが、ないが、

ではなんだ。

手帳に日付と行動を記録して、祖母の夜を番号で管理して、とろみ剤を小さじ二杯量って、窓口で他人の届出を受理して、私の、私自身の届出はどこにある。私はいつ届け出た。この生活を届け出た覚えがない。届け出ていないものは存在しないことになっている。窓口の論理では。私の人生は。私のこの。

「寒いね」

祖母がまた言った。三文字。前回と同じ三文字。

でも私は前回のように繰り返さなかった。寒いね、と言えなかった。喉のどこかが詰まっていた。コンクリートの冷たさが背骨の奥まで来ていて、でも冷たいのは外気のせいだけではなくて、

「おばあちゃん」

声がおかしかった。自分の声が。窓口の声でも夜の声でもなかった。

「おばあちゃんは、行かなかったの」

「え?」

「あの人と。約束したのに。なんで行かなかったの」

祖母が黙った。

五秒。十秒。自動販売機の冷却音だけが遠くで唸っていた。

「行けなかった」

祖母が言った。

「行けなかったの。怖くて」

鞄の上の手が震えていた。寒さではない震え方。

「行けなくて、そのまま、ここに来た。ここで暮らして、ここで子どもを産んで。でもね、鞄はずっと詰めてあったの。いつでも行けるように。いつでも」

祖母は鞄の留め金を撫でた。パチンとは鳴らさなかった。

「あなたは」

祖母が私を見た。

「あなたは、行きなさいね」

私は返事をしなかった。できなかった。返事をすると鞄を開けてしまう。自分の中の、詰めたまま押入れにしまってある何かの、留め金を開けてしまう。開けたら中は空っぽかもしれない。空っぽだったら。

「帰ろうか」

私が言った。声が濡れていた。なぜ濡れているのかは考えない。名前をつけると受理しなければ

「うん」

祖母が立ち上がった。私の左腕を掴んだ。手首の少し上。やけどの痕に、祖母の指が触れた。今度は──今度だけは──祖母が、痕のある場所を、知っているような力の入れ方で握った。

家が見えた。門灯。

鞄は、今夜は祖母が自分で押入れに戻した。

留め金の音は、しなかった。

 

翌朝。

祖母は台所で食パンにバターを塗っていた。

「おはよう。パン食べる?」

私の分も焼いてくれた。端まで丁寧に。

「いってらっしゃい」

「いってきます」

「気をつけてね」

「うん」

「傘、持った?」

「今日は降らないよ」

「朝のテレビで雨って言ってたよ」

天気予報を見ていた。私の外出に傘を勧めている。「今」の祖母。

「じゃあ、持っていく」

折りたたみの紺色の傘。祖母のものか私のものかわからない傘が、この家には何本かある。

 

窓口。

昼休み。吉川さんが海苔を剥がしたおにぎりを食べながら。

「水谷さん、先週の死亡届の人、名前がわからなくなったって言ってたって?」

「旧姓と婚姻後の姓が混ざったみたいで」

「あるよね、そういうの」

名前がわからなくなる。

祖母は昨夜、自分の名前を櫛に聞いていた。磨り減った文字を指でなぞって。自分の名前をわすれないように、と父親に言われて持ってきた櫛。名前がもう読めない櫛。

赤いフェルトペンの蓋を嵌め直した。パチン。

 

二月は短い。二十八日しかない。日めくりカレンダーを毎朝めくる。

祖母の夜は不規則に訪れた。起きる夜と起きない夜。鞄を出す夜と出さない夜。

二月十五日の夜。祖母は起きて、台所で、暗い中、自分の白い髪を自分で梳いた。何度も何度も、同じ方向に。私は襖の隙間からそれを見ていた。声をかけなかった。

二月十九日の夜。「美代ちゃん」と呼ばれた。「明日、お弁当いらないからね」と言った。母に向かって、母の弁当を断っている。何の脈絡もない。

二月二十三日の夜。起きなかった。私は午前一時まで茶の間に座っていた。白い頁。何も書かない頁がいちばん長い。

 

二月二十七日。木曜。

窓口で婚姻届を受理した。届出人の女性が泣いた。隣の男性がハンカチを出しかけて──持っていないことに気づいて、ポケットに手を戻した。女性は自分でティッシュを出した。男性は手持ち無沙汰に立っていた。

「おめでとうございます」

言うことになっている言葉を言った。言いながら、ポケットに入れた手を見ていた。差し出そうとして、差し出せなかった手。

夜。

「おばあちゃん、髪やろうか」

「いいの?」

「うん」

洗面台の前で、夜会巻きを結った。蛍光灯の下。ピンを挿した。一本目。二本目。三本目。

鏡の中の祖母が笑った。

「きれいね」

今度は私に言っていた。鏡の中で、私の目を見て。祖母の目が、ここにある目だった。

「ありがとう」

「遥ちゃんは上手ね、これ」

遥ちゃん。私の名前。夜なのに。日没後なのに。今夜は、ここにいる。

「おばあちゃんに教わったんだよ」

嘘だった。動画で覚えた。でも嘘ではなかった。祖母が「髪をやって」と言わなければ、覚えなかった。頼まれることで、教わった。

「そうだっけ」

「そうだよ」

「お父さんがね、髪はきれいにしなさいって、いつも」

「うん」

「櫛をくれたの。名前を彫って」

「知ってる」

「わすれないようにって」

「わすれてないよ」

鏡の中で目が合った。祖母の目に涙はなかった。目の縁が赤かった。蛍光灯のせい。かもしれない。

「わすれてないよ」

もう一度言った。誰に言ったのか。

ピンを一つ追加した。四本目。少し斜めに。動画にはなかった角度。私が決めた角度。

 

二月二十八日。金曜。二月最後の日。

受理番号の月次集計。出生、婚姻、離婚、死亡、養子縁組、その他。数字だけが残る。名前は消える。筆圧も、震えも、消える。

退庁。丸吉ストア。嚥下補助ゼリー、いちご味。在庫三個。三個買う。

「ただいま」

返事がない。

台所。いない。和室。いない。

心臓が一拍分。

「おばあちゃん」

二階。ベビーゲートが開いている。

祖父の書斎。祖母が座っていた。引き出しが開いている。手紙の束が膝の上に。紐が解かれている。

読んでいなかった。封筒を一通ずつ手に取って、表を見て、裏を見て、戻していた。触っていた。

「おばあちゃん」

夕方の顔。

「これね」

封筒を一通、差し出した。白い封筒。昭和三十三年四月。宛名は「内海冬美様」。差出人の名前。知らない名前。

「読んでいいの」

「あなたに読んでほしくて」

あなた。水谷さんでも、美代ちゃんでも、遥ちゃんでもなく、あなた。どの名前でも。ここにいるのは私で、祖母が「読んでほしい」と差し出した相手は私だった。

封筒を開けた。万年筆の青いインク。細くて、右に傾いた字。

 

映画のこと。封切りの時代劇を観た。食堂で天丼を食べた。海老が大きかった。季節の変わり目だから体に気をつけて。

最後に一行。

会いたい。

海老の大きさと「会いたい」のあいだに脈絡がない。なくていい。脈絡があったら手紙ではなく報告書になる。脈絡がないまま「会いたい」と書ける相手がいて、その相手は祖父ではなくて、

この引き出しに七十年。

祖父の机の引き出しに。祖父の部屋に。

祖母はこの手紙を持って、この家に嫁いできた。「あの人」への手紙を持って、別の男のもとに来た。それとも。それとも別の男のもとに来たから、手紙を持ってくるしかなかったのか。持っていかなければ捨てることになるから。捨てられなかったから。

この家に来たことが「正しい届出」だった。受理された人生。婚姻届。出生届。母が生まれて、私が生まれて。全部、受理番号のついた正規の手続き。

手紙は届出ではない。受理されない。番号がつかない。どの台帳にも記載されない。されないまま七十年、引き出しの中で。

私の存在は受理済みで、祖母の「会いたい」は未届で、

私は。

手紙を畳んで、封筒に戻した。指が震えていた。窓口では震えない指が。

祖母は手紙を紐で括り直していた。角を揃えて。

何か言わなければいけない気がした。ありがとうではない何か。ありがとうでは足りない。足りないが言葉がない。窓口には「受理いたします」と「以上で結構です」しかない。どちらも違う。どちらも、ぜんぜん。

「おばあちゃん」

声がまた壊れていた。壊れるのは夜だけだと思っていたのに、夕方の光の中で壊れている。蛍光灯ではなく、窓からの西日の中で。

「おばあちゃん、行けばよかったね」

言ってから、自分が何を言ったのかわからなかった。行けばよかった。行っていたら母は生まれない。私はいない。私がいないことを勧めている。自分の不在を。自分の不在を祝福するような言葉を。

祖母は引き出しを閉めた。私を見た。午後の光の中で、ここにいる目で。

「行かなくてよかったよ」

静かに言った。

「行かなくて、ここにいて、よかったよ」

それが祖母の嘘なのか本当なのか、私にはわからなかった。嘘でも本当でもいいと思った。届け出ないまま。受理されないまま。

階段を降りた。祖母がベビーゲートをまたぐとき、肘を支えた。骨が硬かった。

 

三月。梅。祖母の家の庭の隅の一本。白い花。

「きれいね」

自動販売機にも梅にも同じ言葉を使う祖母。

夜の祖母は、三月になると少し穏やかになった。日照時間が延びた分だけ、祖母の「現在」が延びる。

鞄は押入れで眠っていた。「あの人」の話はしなくなった。

私は毎晩、午前零時まで座っていた。白い頁が増えていた。

三月五日の夜、零時を過ぎて祖母が起きなかったとき、手帳に日付を書いて、行動の欄に何も書かなかった。何も書かなかった日の頁をしばらく見ていた。白い頁。それから、行動の欄ではなく、欄の外──日付の余白──に小さく書いた。

「不備なし」。

何の不備か。誰の不備か。窓口の言葉がこんなところにまで沁み出してきていることがおかしくて、台所で一人、声を出さずに笑った。笑いながら左手首を掻いていた。

 

三月十四日。金曜。

午前十一時。出生届。届出人は三十代の女性。一人で来ている。赤ん坊は抱いていない。

「お子さまのお名前は」

「冬美です。ふゆみ」

手が止まった。

一秒ではなかった。もっと長かった。記入用のボールペンを持った右手が、用紙の上で、止まっていた。書けばいい。漢字を確認して、読み仮名を記入して、受理すればいい。いつもの手続き。

「漢字は」

「冬に、美しいの美です」

冬に、美しいの美。

内海冬美。水谷冬美。

櫛の背に彫られた名前。磨り減って読めない名前。自分の名前をわすれないように。

書いた。冬美。フユミ。ボールペンの先が紙の上を走った。走ったときに、この名前を書いている手が祖母の髪を結う手と同じ手であることを、指の筋肉が、知っていた。

出生の日時。三月十二日、午前三時七分。不備はない。

「届出を受理いたします」

届出人が立ち上がった。自動ドアが開いて、三月の光が入ってきた。冬の光ではない。

赤いフェルトペンはペン立てにある。キャップは嵌まっている。今日は使わなかった。

左手首の内側を見た。痒みは引いていた。痕はある。消えない。消えないが、今は痒くない。

次の届出人が番号札を持って立っている。

 

不備は、なかった。

© 2026 無花果回 ( 2026年4月12日公開

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