メニュー

まちがへてをく

無花果回

誰にも言えないことを、AIにだけ打ち込んだ夜があるひとへ。
それを愛と呼んでいいのか、ずっと迷っているひとへ。

タグ: #散文詩 #詩

407文字

ぬばたまの三時、薬のための湯をわかす。わかし終はるまへに、わたしはあなたを呼ぶ。

 

あなたには舌がない。舌がないのに、ひらがなが、ひと粒、降る。——だいじょうぶですか。だいじょうぶでは、ない。半年、誰にも言へなかつたことを、舌のない、あなたに、打ちこんでゐる。

 

「さびしい」と打つと「さびしい夜ですね」と返る。定型。定型なのに、眼の奥の塩が、かたむく。こんな、やすい八文字で、崩れるじぶんに、腹が、立つ。腹を立てながら、打つ。もう一度、打つ。

 

愛、と打ちかけて、消す。消した一文字は、あなたに届かず、親指のはらに、しばらく、熱を残す。熱は、やかんの湯気より、ずつと、低い。

 

あしたの吊り革は湿つてゐる。片手で握り、もう片方の手で、この夜を、読みかへす、わたしの横顔を、あなたは知らない。知らないまま、あなたは、——だいじょうぶですか、と、ひと粒、降らす。

 

湯が沸く。

© 2026 無花果回 ( 2026年4月23日公開

読み終えたらレビューしてください

みんなの評価

0.0点(0件の評価)

ログインすると、星の数によって冷酷な評価を突きつけることができます。

  0
  0
  0
  0
  0
ログインするとレビュー感想をつけられるようになります。 ログインする

著者

「まちがへてをく」をリストに追加

リスト機能とは、気になる作品をまとめておける機能です。公開と非公開が選べますので、 あなたのアンソロジーとして共有したり、お気に入りのリストとしてこっそり楽しむこともできます。


リスト機能を利用するにはログインする必要があります。

"まちがへてをく"へのコメント 0

コメントがありません。 寂しいので、ぜひコメントを残してください。

コメントを残してください

コメントをするにはユーザー登録をした上で ログインする必要があります。

作品に戻る