蜘蛛

渡海 小波津

205文字

散文詩です

 

 

巣がある。これを美しいと思うか、恐ろしいと思うか、汚いと思うか。

そこに蜘蛛の姿は見えない。ま新しげな巣である。これから餌を得るための巣である。

飛び込んできた身をぐるぐる巻きにして体液を吸取り飲み干す。

飲み干された骸は捨てられ、

また次の餌を待つ。

朝露を捕え、飲む。

繭を拵え、産む。

巣である。罠であり、寝床であり、揺り篭である。

さあ我を捕え喰らえ、

主亡き蜘蛛の巣よ。

 

 

2013年5月9日公開

© 2013 渡海 小波津

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