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静もまた動なり

タグ: #散文詩

714文字

歩きます。歩きます。歩みます。歩みます。

三つ角を曲がったところで十字路へ出ます。歩みます。歩みます。石壁で作られた十字路でございます。歩む。歩む。灰色い石壁でございます。歩む。歩む。汚れた壁でございます。歩みます。歩みます。空だけはぽっかり上にありまして、石壁は私よりも二、三尺高く、羽もございませんので、沿って沿って歩んでいくより他にございません。

立ち止まりて耳澄ますに、壁の向こうもこちらも無音でございます。若干早足で歩みきました私の鼓動だけが、まだトットッと鳴っておりました。

道はどれも同じほどを歩みますれば石壁で、恐らく角に行き着きて後、また私はその角を曲がり行かねばならぬのでしょう。

息を整え鼓動も治まった頃、十字を曲がらずに私は進むことに決めました。真っ直ぐに、真っ直ぐに、真っ直ぐに、真っ直ぐ歩みますれば恐らく角に行き着きて後、また私は曲がり行かねばならぬのでしょう。
真っ直ぐ真っ直ぐ真っ直ぐ真っ直ぐ、曲がって曲がって曲がって曲がって曲がって曲がって、左四つでまた元通り。

やたら壁向こうの通りがにぎやかに聞こえる場所に出ます。なぜあちらはにぎやかなのでしょう。どうしてこちらは静かなのでしょう。壁六尺を越えれば、私もいつかあの喧騒へと出られるのでございましょうか。それとも、我が身はかくして喧騒の横を歩むものなのでございましょうか。

また行きますれば喧騒も遠ざかり、同じ十字路がございます。私はまた歩んでおります。歩みます。歩みます。往きます。往きます。

 

ゆきました。

 

 

喧騒など一過性のものなり。過ぎ往けばまた同じ、いつもの騒がしいまでの静寂が、昏々脈々と続くのである。歩むのである。

© 2013 渡海 小波津 ( 2013年2月10日公開

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