中村雨紅の墓

大川縁

442文字

八王子市上恩方町にある童謡作家の墓です。中村雨紅は宮尾神社の三男として生まれたため、神社の境内には石碑があり、墓も入口に置かれました。本名は高井宮吉なので墓碑は高井家之奥津城と刻まれています。

陣馬高原という名が目につき、帰路につくのをやめて、

高原に向かう街道を走る。

乗り慣れた自転車は、少し軋んだ音がして、

金具に油を差しながら、騙し騙し行くことにした。

街道は緩やかな道程で、若干ののぼりはあるものの、

舗装されているので、まだ走りやすい。

 

八王子市に編入する以前、

陣馬街道沿いには南多摩郡恩方村というところがあったという。

たしかに走っていると、町名で恩方というのを見かけ、

かつての恩方村の辺りに差しかかっているのだとわかる。

 

しばらく道なりに進むと「中村雨紅の墓」という立て札があった。

これは恩方村出身である中村雨紅の墓が、

宮尾神社の入口に置かれているためだった。

中村雨紅は「夕焼小焼」の作詞をした作家で、

暮時に流れるこの童謡の詞は、

この恩方村のことを書いたのだそうだ。

 

駅のホームでも流れるあの懐かしいメロディは、

陣馬街道を囲む景色と重なり、

自転車の軋む音を包み込みながら

暮れる町の灯となるのだった。

2016年10月15日公開

© 2016 大川縁

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