日常。(52)

日常。(第45話)

mina

小説

1,475文字

恋愛っぽく魅せるのはキャバクラ嬢のお仕事で、風俗嬢のお仕事っていうのは恋愛を魅せるというよりも快楽を与えるものだと思っていたから、お客様に「快楽」ではなくて「恋愛」を求められてしまうと、かなり面倒くさい
「今日は何もしなくていいよ」
とか言われちゃうと、何しに来たんだよ!って言いたくなる
長い時間お客様と何もしないで2人きりは、かなり辛い
『だから風俗嬢になったのに…』
なるべくなら私を指名してくれるお客様全員「快楽」を求めに来て欲しい

私に「恋愛」を求めないで欲しい

「まぁでもしょうがないんじゃない?」
「そうかなぁ」
「話すのが好きな人もいるじゃん?あずさとかさ」
「でも…私は話すのって苦手だし…」
「アンタは根掘り葉掘り聞かれるの、嫌いだもんねー」
「うん」
同僚で仲良しのユカさんは私より年上で私の理解者だ
「…最近アンタに通って来てる客がそういう客だから困ってんでしょ?」
「…うん」
「やっぱりねー、アンタ解りやすいわよね、本当に」
「…この前なんか120分ではいって、何もしないで帰って行ったんだよ」
「っていうかその客、楽ね」
「えーヤダよ!その間ずっと人のこと探るみたいに根掘り葉掘り聞いてくるんだよ!私のこと!」
「でもちょっと考え方を変えちゃえばさー、カラダ使わなくていいし、喋ってるだけなんだから、楽じゃない?」
「うーん…でもぉ」
「何か聞かれたら適当に答えちゃいなさいよ、そんなん真剣に相手してたら疲れちゃうわよ」
「 … 」
ユカさんの言うことは確かに一理あるなって思った
真剣に受け答えしちゃうから、疲れちゃうのかも知れない
お客様には悪いけど、もうちょっと不真面目にお相手してみることにした

         ・          

僕の母は娼婦だった
母はとても綺麗で自慢の母だった
僕は母に絶対嫌われたくなかったから、母に甘えられなくても必死で我慢して、母に褒められたいから勉強を頑張ったり、スポーツを頑張ったり…とにかく母の気を引くことに一生懸命だった
僕にとって母は絶対的な存在だったから、そんな母がカラダを使ってお金を稼いでいると知ってしまったとき、衝動的になって母の首を絞めてしまった
僕はそのとき、母に「ごめんね」と言われた
僕に首を絞められながら母は泣いて、ごめんねと僕に謝った

…そのときから僕は母の顔を見ていない
母も僕もお互い再び逢おうとしないまま、僕は大人になって、結婚もして子供もいる

母は僕のことをどう思っているんだろうか?

         ・          

「こんにちは、また逢えたね」
「こんにちは」
「今日も君は何もしなくていいよ」
「 … 」
「今日もたくさんお話しをしよう」
「…今日は、キチンとプレイしませんか?」
「いや、だから僕はそういう目的で君に逢いに来てるワケじゃないからさ」
「私…疲れちゃうんです、やっぱり」
「 … 」
「話しだけで楽じゃないとかいう意見もあったんですけど、やっぱり何か…」
「 … 」
真剣に相手しないようにしようとか思ってたんだけど…私はやっぱり我慢出来なかった
「…うるさい」
「え?」
「僕はカラダ目当てじゃないんだよ!」
私は首を絞められていた
「うっ…」
「どうして!何で!何で解ってくれないんだよ!」
意識が朦朧とする中、私は彼の股間が固くなっているのを見ていた
私は彼が「恋愛」ではなくて「快楽」を求めていたんだなって解ったとき、私も苦しみが「快楽」に変わっていた

                end    

2015年6月8日公開

作品集『日常。』第45話 (全70話)

© 2015 mina

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