いつもそうだ
いつも女は俺から何だかんだって理由をつけて逃げていく
「私がいなくても大丈夫だよ」
「もう、疲れた」
「田舎に帰るね」
「ごめんね、さよなら」
『さよなら』
どうしていなくなるんだよ!
俺はこんなにも寂しくて、女が…
誰かが傍にいてくれないと駄目なのに
「おはようございまーす」
「あぁ、おはよう」
「店長ー、外えらく寒いよー」
「知ってる、雪…降るかな?」
「…降りそう。降ったら、お店超暇じゃない?」
「やばいねー、でも予約入ってるよ、3本」
「マジで!ラッキー」
「本指名の佐藤さんと伊藤さん…後は新規でネット指名の人」
「…新規でネット指名の人か…」
インターネットのお店のホームページに載せている私のプロフィール写真を見てくれて電話で予約してきてくれた、ネット指名の新規のお客様…
「初めて逢う人かぁ…」
「新規のお客さんは大事だよー」
「解ってるけどさぁ」
初めて逢うお客さんって、ものすごく緊張するのよね
ちょっと憂鬱…
「あの人、奥さんとかいないのかねぇ」
「いないから、毎日ココに来てるんじゃない?」
「そうよねぇ、いい男なのに」
「何?おばちゃん、気に入ってんの?あのおっさん」
「いや、そういうんじゃなくって…毎日サウナに来て、また出てって…いい男なのにねぇ」
「おばちゃん、男は顔だけじゃないってことよ!」
「 いつも独りで寂しいだろうに… 」
ココも飽きたなぁ…って言っても他に行く所なんてねぇしなー
食堂のおばちゃんと姉ちゃんはやたら俺の事ジロジロ見るようになってきたし…
そろそろ風俗行って、気に入った風俗嬢の所にでも押しかけて、
毎日気持ちいいセックスと美味しい食事にありつこうかな
「うまくいけばの話だけどな」
漫画喫茶でも行って、インターネットでもやって、無修正動画でも見てオナニーでもするか
「じゃぁ行ってきまーす」
「行ってらっしゃい、頑張ってね」
お店を出て、エレベーターに乗って、外の出入り口を出て…
『どんな人なんだろう』
近くの自動販売機でお茶を2本買って
『どんな人なんだろう』
待ち合わせ場所に立っていたその人は
「写真よりずっと可愛いじゃん!」
「あ…ありがとうございます」
若そうに見えるけど、きっと40代ぐらいの黒いスーツを着た、ヤクザ風の人だった
「初めまして、よろしく」
そう言って差し出されたその手は冷たかった
『どんな人…なんだろう』
「初めまして」
握手っていうのも何だか不思議だった
うちのお店はホテルヘルスだから、外で待ち合わせをして2人でラブホテルに入らないといけない
この人と2人きりでホテルに行かなければならない
「休憩時間は2時間です」
2人きりになって、部屋に入らなければいけない
「 … 」
ラブホテルの部屋に着くまでの時間、その人はずっと私の手を握っていた
何も喋らず、ただずっと…
「 … 」
私は…濡れていた
何だか解らないけど、この人と逢った時からずっと
…そして部屋に入って、その人がドアを閉めた瞬間にイッてしまった
end
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