rain on you

かきすて(第1話)

吉田柚葉

小説

1,740文字

台風でひまなのでブンゲイファイトクラブごっこをしました。

台風が来ていたが妻とそとに出た。

二日まえにツイッターで見た、「地球史上最大規模」ということばに惹かれ、はなしはんぶんにしんじてみることにしたのだが、まったく肩すかしもよいところだった。俺たちは午前午後と部屋で動画を見てすごしたが、夕方にさしかかり、大雨洪水警報が出た五分後にマンションを出た。徒歩で駅近のスターバックスコーヒーにむかった。

小雨は糸に似ていた。なので、俺たちがつきあいはじめたころに奈良公園ちかくの露店で買った巨大な傘も妻のお気に入りの花柄の傘も出番がなかった。

まちは息をひそめていた。

ひとの往来はなく、道路に車はすくなかった。古い酒屋も、個人経営のクリーニング屋も閉まっていた。つい二週間まえに発表した電子書籍がいつもどおり売れていないことを妻につたえた。妻は俺の書いたものを読んだことがないため、ふだんはこうした話題はひかえるのだが、今回の小説は妻の体験をもとに書いたものだったので、報告の義務がある気がした。

「そう」

と妻は言った。それでしまいかと思ったが、おもむろに妻はつづけた。「宣伝してないからじゃない」

俺はうなずいた。そうして、「やっぱり小説なんて作者読者そうほうにてまなものをやるより、ユーチューバーになる方がいいと思うんだよな」と言った。われながらなげやりなもの言いである。

スターバックスコーヒーに到着した。客はすこしだけいた。

2019年10月12日公開

作品集『かきすて』第1話 (全40話)

かきすて

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© 2019 吉田柚葉

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