お子さま天下⑭

お子さま天下(第14話)

吉田柚葉

小説

2,114文字

十四回目です。最終回です。最終回っぽくないけど。

それから三十分ほどして小林先生と修一くんが受付に現れた。どうやら補習の英単語テストが終わったらしい。長いときであれば、二時間も自習室から降りてこないのに、一時間足らずとは、間違いなく最短記録であった。

「今日は早く終わったんだね。」

そう言うと、修一くんは、「当たり前じゃん。」と、明るい返事をした。近くで見ると、彼は、いつも以上に、ワックスで頭髪をガチガチに固めているのが判った。つまり髪に手間をかけて尚、遅れることなく塾に来たということだ。

そうして修一君は、俺に雑談をふっかけることなく、大人しく帰って行った。普段不真面目な生徒が真面目なのが、こんなに不気味なことだとは思わなかった。

俺と小林先生は、二人して、修一君一人を見送るためだけに塾の入口に立っていた。

「今日は修一君、やけに調子が良かったようですね。」

やけに、という言葉を強調して俺は言った。

「そうですね。こんなことはこれまでにありませんでした。」

存外、懐疑的な色を含んだ声であった。彼女は、そのぱっちりと見開いた目を上目遣いにして、俺に視線を送った。それは、俺の存在を確認するかのようであった。

「つづくかな。」

と、俺は口に出してみた。

「さあ、つづかないでしょうね。」

感触のない声である。

2019年9月28日公開

作品集『お子さま天下』最終話 (全14話)

お子さま天下

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© 2019 吉田柚葉

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