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岡本尊文とその時代(三十六)

岡本尊文とその時代(第36話)

吉田柚葉

二度と精神分析なんてしなくなる人も出て来るでしょう。

タグ: #ミステリー #メタフィクション #純文学

小説

3,411文字

我々は受付を済ませ、ホールの中に入った。既に六割方、席が埋まっていた。三十代がとりわけ多いと見えたが、初老とおもわれる夫婦も何組か見られた。私たちは通路側の後ろの方の席に腰を下ろした。配られたパンフレットには本日のスケジュールと、猪原と尊文のプロフィールが書いてあった。猪原の物は、『晴天の会』のホームページに載っているのと同じであったし、尊文の物は、『真冬の炎』の著者紹介文と同じであった。どうやら、二人の講演が別々にあるらしい。

「……車内では寝てしまって、悪かった。」

と私は切り出した。

「いえいえ、とんでもないです。お休み頂けて良かったです。」

と宮崎氏はパンフレットをめくりながら言った。

「其れで、ケータイショップではどうでしたか。」

と問うと、

「其れなのですが、店がなくなっていたのです。」

恐る恐ると云った態で宮崎氏は言った。

「なくなった?」

「テナント募集中になっていました。」

「場所は本当にそこで合っていたのか。」

と私は形だけの質問をした。

「はい。間違いないです。」

私は其れで質問を打ち止めにする事にした。実際、なかったものはなかったのだから、ここで又二人で突飛な陰謀論を展開するのは楽しい事とは言えない。

私の脳裏には赤いポストが浮かんでいた。コンビニの前に突然立ったポストであった。あの令状は尊文に届いたのであろうか。尊文は書評に就いてしか触れなかったが、其れは何故なのだろうか。……

© 2019 吉田柚葉 ( 2019年8月21日公開

作品集『岡本尊文とその時代』第36話 (全41話)

岡本尊文とその時代

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